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?住民のニーズを把握する手段を持ち、地域で考えたことを具体化する予算をつける(頑張っている地域を優先するという意味を含む)という首長と行政の姿勢

 

●住民主体のまちづくりにおける議会のかかわり方

最後に、住民主体のまちづくりにおける議会のかかわり方について考えます。住民主体のまちづくりが進めば自分たちの仕事がなくなるという、議会、議員の抵抗をどう考えるかということです。これまで議会は、行政のやることをチェックすること、地区の要望を行政につなぐことの2つの役割を果してきました。しかし、前者については弁護士や会計士など3〜4名のチームがいればできてしまうのではないか。また後者は国をだめにしている利権体質の小型版ということになりかねないきらいがあります。

しかし、住民が自ら地域の将来を相談して決めるようになっても、立法機関として、議会、議員がやるべきことはたくさんあります。私は今、兵庫県神崎町で、『ふるさとの川づくり委員会』という住民主体のまちづくりのお手伝いをしています。その中では、子どもの川遊び場の確保を漁業権に優先させるなど、おもしろい成果が生まれようとしています。また、『川をきれいにする日』を決めようという議論も進んでいます。しかし、2年間かかった最後の委員会で出たまとめの意見が、「これについては、我々住民が言っても効果がないので、行政から呼びかけてもらいたい。」というもので、私はがっかりしました。これは、行政が決めて住民が参加する活動ではなく、住民が決めて住民がやるべき活動だからです。そして、これこそ議会で決めるべきことだと思ったからです。住民が先に活動の実績をつくることで、議会を動かすという考えで進めてほしいと思います。

住宅団地の組織に例えると、行政は管理組合、議会は自治会です。住民どうしの懇親やみんなで何かをやろうということを決めるのは、行政ではなく、議会であるべきだということです。また議員は、出身地区の代表としてではなく、全町的な視野から見た施策の優先度を検討する使命も担っています。議員の皆さんは、初当選した時の初心に帰って、議会のあり方と議員の使命を考え直していただきたいと思います。

 

●おわりに

以上で見てきたように、住民、行政、そして議会が変わり、互いにパ―トナーシップを持つことができれば、住民主体のまちづくりは強い力を発揮するでしょう。そして、住民主体のまちづくりは民主主義のはじまりです。日本の民主主義を確かなものにするため、地域から大きなうねりを起こし、やがては国をも変えていくという気構えで、これからの全国のまちづくりが進んでいくことを期待し、私も微力を尽くしたいと思います。

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プロフィール

橋立 達夫(はしだて たつお)

(株)ヒューレ地域計画工房 代表取締役

1946年 東京都生れ。

1973年 千葉大学大学院園芸学研究科修了、農学修士

(株)芙蓉情報センター総合研究所(現富士総合研究所)入社

1984年 (株)ヒューレ・コンサルティング・グループ設立

1990年 (株)ヒューレ地域計画工房設立 代表取締役

現在、国土庁地方振興アドバイザー、明海大学経済学部非常勤講師(地域計画論)。著書等に「地域問題事典」(共著、総合研究開発機構)、「自治体の土地政策」(共著、(財)日本都市センター)、「対談 21世紀の地域づくり」(毎日新聞掲載)など

 

 

 

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