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記念シンポジウム

造船・海洋工学の将来技術と今後の研究開発体制

運輸省海上技術安全局長 山 本   孝

(代読 首席船舶検査官 谷野龍一郎)

 

1 はじめに――造船学会100周年を迎えて――

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我が国造船業は,100年前の西洋型の鉄鋼大型船の建造の推進,戦後の計画造船,オイルショック後の構造調整,OECDにおける国際協調などに対応しながら今日まで発展を遂げ,我が国だけでなく世界経済の発展に寄与してきた。造船学会は,造船業界が変動する中,絶えず科学技術的側面から造船業の発展に大きな役割を担ってきた。また,我が国造船界の発展の歴史の表象でもある。

今日,造船学会100周年を祝うとともに,造船・海運業に関わる行政の一端を担うものとして,造船,海洋技術の可能性とその開発体制について所感を述べることとする。

 

2 造船・海洋に関する技術の展望

 

まず,造船・海洋技術を生産技術と製品技術に分けて考えることとすると,生産技術は造船業の競争力の原点となるものである。ここで,国の役割ということを考えたとき,基本的には,この分野の技術開発は各生産事業者が自分の事業をどう運営していくかということであり,昔は国がこの面でも積極的に関与したが,今後は原則各社が自己責任で行うことが望ましいと考えられる。

ただし,海造審で指摘されている様に,情報分野等については統一的,効率的という観点から国の関与する部分があり,応分の役割は果たして行くことが必要である。

しかし,ここでは深入りしないこととする。すなわち,生産技術よりも生産された物の利用価値,環境問題,海の利用等に関する技術に重点をおいて考えてみたい。

? 技術は社会構造を変革する

技術は,ニーズオリエンテッドな発展とシーズオリエンテッドな発展があり,後者はひとたび世の中に受け入れられると経済構造,社会構造自体を変えつつ発展する場合がある。これまでの造船・海洋技術も,大型船,コンテナ船などは,世の中の経済構造,社会構造を変えるぐらいのインパクトがあった。今後も,例えばTSLはモーダルシフト,地域の活性化,アジア航路等貿易の活性化など高速貨物輸送に革命をおこす可能性があり,メガフロートは閉塞状況にある社会資本の整備の画期的な効率化と活性化をもたらすようなポテンシャルがある。

また,規制緩和の大きな流れは,競争の中で差別化し他社に格差をつけるべく新技術が採用される環境を後押ししていると言え,これが規制緩和の最大のメリットであり研究開発にとって大きな追い風である。

? 技術は地球環境を保全する

環境,安全,特に地球環境問題,油流出事故による海洋汚染等に対する社会的意識は高まっており,この分野で造船,海洋技術の責任と果たす役割は大である。

また,最近では,地球環境を考えたとき,地球には越えてはならない絶対的限界があり,人類の発展を図るには,この限界内,枠内で対応できるシステムを考えることが必要であるとするレスポンシブルケアという考え方が国際的に,また,全産業的に広がりをもって論じられ始めている。造船,海洋技術の研究開発でも,このレスポンシブルケアを充分に考慮する必要がある。

先日,5月12日にスーパーマリンガスタービン技術研究組合の創立披露パーティーがあり,抜本的なNOx対策及び先進的な舶用ガスタービンを目標に本年度より研究開発が推進される。これも1つのレスポンシブルケアである。

他方,世界的な傾向となっているフラッギングアウトは,一面において船舶管理の劣悪化と操船技術の低下を招いている。この解決策は,ソフト(人)をハード(機器)に置き換えることと船上・現場での判断

 

 

 

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