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は苦しい変化を遂げており,造船に係る科学技術の発展を担ってきた日本造船学会に寄せられる期待は従来にも増して大きくなっております。

日本造船学会では,次世代を担う若者が「海」にまつわる夢をもち,「もの造り」の意義を認識し,今後の造船産業・海事産業を支えていくべく,今回の記念講演会も含め,様々な活動が行われていると伺っております。私ども科学技術庁におきましても,青少年の科学的創造力の育成をはかるための努力をしておるところでありますが,これ迄日本造船学会の皆様が100年にわたり築き上げられた,造船技術,海洋関連す支術が立派に継承され,さらに飛躍的な発展を遂げられますよう期待しております

最後に,今後の日本造船学会及び会員の皆様方のますますの御発展を祈念いたしまして,私の御挨拶とさせていただきます。

(代読 科学技術政務次官 岡 利定)

 

祝辞  日本学士院長 藤田良雄

 

本日ここに,皇太子殿下の御臨席を仰ぎ,国内外の多くの御来賓の御出席のもと,日本造船学会創立百周年記念式典にあたり日本学士院を代表してお祝いの言葉を申し上げます。

日本造船学会は明治30年の創立と伺いましたので,工学系の学会としては最も古いものの一つであると思われます。明治時代にあってすぐれた船舶の建造は当時要請された重要な工業であり,その発展や近代化には造船学のすぐれた技術者・研究者の御努力が大きかったことと思います。そのお蔭をもちまして今日わが国は世界に誇れる造船技術を擁しておりますし,日本造船学会はその創立以来造船産業・海事産業の進展に,技術者・研究者間の交流面に大きく寄与してこられました。

一方,日本学士院は明治12年に教育・学術の進歩発展を図るため,東京学士会院として創設されたのが始まりで,その後,学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関として,諸事業の一つに授賞制度を設け独創的な研究に対する表彰を行うなど学術の振興に寄与してまいりました。造船学の分野では,大正2年に近藤基樹氏を第3回帝国学士院賞の受賞者として以来,多くの方々が受賞しておられますし,また会員につきましては戦後に限っても山県昌夫先生,吉識雅夫先生,そして昨年は,乾崇夫先生を新たに会員としてお迎えいたしました。このように日本造船学会と日本学士院とは共に古くから深い関わりを持って今日に及んでおります。

また造船学の分野から,航空学さらには地震学の分野への研究にも進んだと伺いました。このことからも造船学の研究者が日本の学術の進歩発展に多大な貢献をされたことがわかります。日本造船学会はこれらの研究者の切瑳琢磨の場として重要な役割を果たしておられます。

間もなく21世紀を迎えるにあたり,限りある資源の中で人類は如何にして生きてゆくかを今後さらに考えなければならないと思います。人類と海洋とを船舶という媒体で結ぶ日本造船学会が次の100年に向かって,ますます発展されることを期待して私のお祝いの言葉といたします。

 

祝辞  日本財団会長 曾野綾子

 

本日ここに皇太子殿下をお迎え申し上げ,また文部大臣,運輸大臣,科学技術庁長官,ご来賓の皆さまの暖かい祝福を受けて,日本造船学会が創立百周年をお迎えになりましたことを心からお祝い申し上げます。

考えてみますと,この100年は,夢のように複雑で長い試練と発展の時代でありました。一般の庶民の暮らしも変動と変化の世紀でありましたが,造船の歴史の中では,まさにかつてないほどの変化と発展と試練を受けられた歳月でもありました。

数十年昔,私はまだ若い駆け出しの作家として,ほんの少し船の勉強をいたしました。初めて乗った船は戦時標準型船舶と呼ばれた戦争中の生き残りの船で,レンプロのエンジン,つまり石炭を焚くけなげな船でした。速力は7ノット,煙突の煙が進行方向にたなびいていた不思議な光景を今でも思い出します。しかし私はその初めての航海の体験から,船は人生を乗せて走っているものだということを実感し,その姿に魅せられました。

 

 

 

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