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そのためには,今後はアジア諸国をも含めた世界各国と手をたずさえて協力することが重要でありましょう。

創立百周年を迎えるにあたり,日本造船学会としまして,本日の記念式典,祝賀会の他に,造船,海事産業の次世代への継承,国際化の推進と世界に開かれた学会への進展を目的といたしまして,多くの事業を行っております。これらの事業の遂行に関しましては,日本財団をはじめとする多方面にわたる団体から多大なご援助とご協力を賜わっておりますことをご報告するとともに,深く感謝を申し上げる次第でございます。

最後に,公務ご多忙の折りにもかかわりませずご臨席賜わりました皇太子殿下をはじめ,内外からの多数の来賓各位の皆様に厚く御礼申し上げまして,私のご挨拶といたします。

 

お言葉 皇太子殿下

 

創立以来100周年を迎える日本造船学会の記念式典に臨み,造船にかかわってこられた皆さんとお会いできることをうれしく思います。

国土を海に囲まれた我が国にとって,船は,国内の交通はもとより,外国との結び付きを確保する上でも必要不可欠な手段でした。飛鳥時代には遣隋使を運んだ木造船を完成させ,その後,遣唐船,御朱印船,弁才船など様々な船を建造し,今や我が国の造船技術は世界最高の水準に達しています。私は,個人的に室町時代における瀬戸内海の海上交通史について研究しておりますが,15世紀半ばの兵庫北関,現在の神戸港に当たる港の記録をひもときますと,大きなところでは1000石積以上の船から100石積未満の船まで,実に大小様々な船が塩,米,木材を始め多種多様な物産を積み,瀬戸内海を舞台に活発に運航していたことに驚かされます。本日,この100周年の機会に我が国の造船の発展に尽くした人々の足跡を偲びつつ,未来に思いを馳せることは,誠に意義深いことと思います。

1世紀にわたる日本造船学会の歴史は,我が国の近代化の歩みとも符号します。学会の前身である造船協会が設立されたのが明治30年,その翌年には早くも欧州航路向けの大型船を竣工させたように,我が国の造船業は,外国の技術を学びながら,短期間のうちに,飛躍的発展を遂げました。戦後も造船業は主要輸出産業となって我が国の復興に大きく貢献し,その過程で編み出された数々の新しい技術が世界でも先駆的な役割を果たしてきたと聞いております。ここに,日本造船学会のこれまでの功績に敬意を表したいと思います。

未来に目を向けますと,最近では海洋工学,海洋環境工学の分野でも活発な研究が行われていると聞きました。21世紀に向けて,日本造船学会が,造船工学,海洋工学の技術を更に発展させ,地球規模の環境保全や,海洋空間の平和的利用にも尽力されるとともに,その造船技術並びに海洋開発技術により国民生活が一層豊かなものとなることを願い,記念式典に寄せる言葉といたします。

 

祝辞 文部大臣 小杉 隆

 

本日ここに,皇太子殿下の御臨席を仰ぎ,社団法人日本造船学会創立百周年記念式典が挙行されるに当たり,一言お祝いの言葉を申し上げます。

日本造船学会は,明治30年4月に創立されて以来,100年の長きにわたって,造船,造機,海洋工学分野の学術研究について指導的な役割を担ってこられました。また,「造船王国日本」としての地位を築いた戦後日本の目覚ましい復興に貢献するなど,我が国の産業基盤の一翼を担ってこられました。これもひとえに,貴学会員を中心とした造船関係者の御努力の賜として高く評価するものであります。

造船学は,流体力学,構造材料工学など緻密な技術工学を集大成した大変広い裾野を持つ学問であり,それだけに他分野との切瑳琢磨や融合が最も活発に進められてきたものと認識しております。造船学に培われた人材が航空・自動車などの運輸機械産業のみならず,コンピュータや先端材料の開発及び環境衛生工学などのハイテク産業分野にも幅広く進出され,先導的役割を担っていると伺い,貴学会の100年の伝統の厚みに深く敬意を表する次第であります。

 

 

 

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