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されるという条件が活かされた結果である。

工業の立地には原料立地、販売有利のための消費地立地などがあり、用水の点からは河川の下流地域ということになろうが、それでも用水立地が他に先行することはなかった。水多消費産業でも水のコストが相対的に小さかったことを反映している。しかしながら、発電の水主火従から火主水従への転換が典型的に示すように、日本は地勢的にも気候的にも水資源が国際的に比較して人口1人当たり年間降雨量は世界平均の5分の1というように必ずしも有利な条件をもっているわけではない。またダム建設も治水的視点からはなれて、発電、工業用水などいわゆる多目的ダム指向になるなどの条件変化の下で水の相対的なコスト高への移行、資源節約的な認識の一般化の下での回収重視という方向に動いてきたのである。

こうした事情の背景として見逃がせないのは工業用水の淡水補給の36.8%が公的負担に支えられた工業用水道に依存していることである。料金の上昇(最近の25年間で5円/m3から21円/m3)でカバーはされているとはいえ水資源開発の公的費用負担はみておかなければならない。一般会計予算に占める比率は91年度についてみると1.1%と必ずしも小さくはない。日本の工業の発展過程におけるインフラ整備は大きくは80年代でその役割を終えているといっても差支えないであろう。90年代に入った段階でなお、水資源開発費のウエイトが、後述するような若千の国に比べて低くないということは注目されよう。

つぎに工業用水の水源別用水量についてみよう、淡水と海水と分けると海水の占める比率は65年の30.2%から、75年の27.2%へと若千低下した後80年には20.9%ヘと更に低下気味である。これは70年代後半以降、鉄鋼業を代表とする素材産業の地位の相対的低下、一方での機械、とくに自動車産業・電機産業を中心とした需要の増大によって、用途も冷却用から、製品処理、洗滌用の比率が高まってきて、海水では不可とする事情ができてきたことによるものである。淡水の用途別内訳でみると製品処理洗滌用の比率の上昇は75年の15%から90年の16%へとあまり大きくないが、海水がすべて冷却用であると仮定すると工業用水全体に占める冷却用水の比率は、海水依存が低下していることを反映して77%から74%への低下となっている。

工業用水の水源を更に淡水の限定してみると工業用水道、上水道など公的インフ

 

 

 

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