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物への窒素供給源としても有用である。

有機物の施用も塩害土壌の改良に有効性が認められる。農産廃菜物の土壌施用は有機物の分解に伴い生成する有機酸による炭酸塩の分解とカルシウムイオンの解離によるナトリウムイオンとの交換反応、土壌への有機物および肥料成分の供給が期待できる。さらに植物残さによる表土のマルチングは土壌侵食を防止するだけでなく土壌への有機物の供給、土壌水分の蒸散防止等の副次効果も期待できる有効な方法である。

従来の塩害土壌の改良にあたっては大量の潅漑水を用いた洗脱が主流である。しかし、国際開発センターの実施した塩害、土壌侵食等の農地劣化の報告書によれば、インダス平野での潅漑水量は平均化された場合、年間約800mmと推定されている。これと自然降雨をあわせても1000mm以下の水量しか確保できず、塩類の洗脱に十分とは言いがたい。さらに局所的にはこれを下回る地域も多いと考えられ、良質の潅漑水の確保が最大の課題となる。これを解決するには地下水として大量に存在する水資源を如何に利用するかが課題となろう。地下水は均一な水質ではなく、土壌中の粘土層の分布によりその性質は大きく異なる。そこで、地下水の水質を潅漑地域ごとに細かく調査し、条件を満たす地下水については積極的に利用する方法も考えられる。この利用に関しては塩類濃度の低い地下水と塩類を含まない潅漑水を交互に用いて洗脱効果の向上ねらう方法である。

1950〜60年代に顕在化した塩害に対し、SCARP(Salinity Control and Reclamation Project)による地下水位のコントロール、LBOD(Left Bank Outfall Drain)による排水路整備事業、On-Farm Water Manegement Projectによる末端水路の漏水、排水改良事業など各種改良事業実施され、ある程度の改良は成功している。

表2に各州における表層土壌の塩害の分布割合を示した。1950年代から1970年代にかけて各州ともEC4dS/m以上の塩害地の分布割合は確実に減少している。しかし依然としてインダス平原全体では100万ha以上の塩害を受けた地域が存在する。さらにこの中には改良方法が複雑なナトリウム土壌が55万ha以上存在し

 

 

 

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