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ている。この結果は、潅漑水を用いた洗脱により塩類土壌の改良は行われたものの、塩類の溶脱後にナトリウムの集積を起こしたナトリウム性土壌が二次的に生成したことが予想されことから、今後このナトリウム性土壌の拡大に留意する必要が認められた。

パキスタンの農業生産性はインダス平野の土壌条件によるところが大きい。この問題の克服には先に述べたような様々な改良手法が確立されている。また、ファイザラバードを中心とする各大学研究機関の技術水準もかなり高いレベルにある。しかし、問題の完全解決には至っていない。この原因は画一的な改良手法が取られたため、問題発生地域の土壌条件、地質条件、環境条件さらに社会構造、経済条件に即した改良手法が取られていないことである。さらに改良後の維持管理には、土壌中の塩収支を考慮して用水量と排水量を決定しなければならない。土壌中の塩類濃度を設定値以下に抑える適切な用水量leaching reguirement(LR)の算出が今後の重要な課題である。

湛水、塩害土壌に限れば、地下水水質を十分に評価した地下水資源の潅漑再利用、植物資源を利用した除塩、地下水位低下対策など地域性に即した手法が必要である。塩害については改良に必要と考えられる潅漑水量の絶対的な不足が制限要因となるであろう。また、塩害地域では塩害の種類とその分布状況は年々変化する。塩害の詳細な調査が実施されない限り、的確な改良手法は策定できないであろう。

 

6 アジアの潅漑農業

 

人類は地球上の陸地面積のわずか11%の優良農耕地と生産性の低い土地を利用して60億に達する人口を扶養している(図5)。東南アジアでは無機質過多、南アジアでは乾燥地等の問題土壌が今後の食糧生産を向上させるための需要な土壌資源となるはずである。東南アジアでモンスーンによりもたらされる貴重な水資源の管理と土壌侵食防止が重要であり、乾燥地を抱える南アジアでは水資源の確保と利用方法、さらに既に広大な面積に達した塩害土壌の改善が重要な鍵となる。

 

 

 

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