日本財団 図書館


究極の、おそらく最も根本的な制限要因は世界市場における実穀物価格の継続的かつ長期的な下落傾向である21。急速で継続的な灌漑地の拡大に基づいて、穀物生産高を上昇のために低価格をさらに低くするであろうか、それで、国にも農民にもほとんどメリットをもたらしていない。

石油とともに、世界戦略的備蓄は最近縮小している。しかし、これには少しも警戒する必要はない。

 

8 水危機は迫っているのか

 

右については水危機は差し迫っているか、おそらく食糧危機に取り混ぜるかどうかという質問につながる。1970年代のエネルギー危機以来、世界の水の状態を分析した本のほとんどが、とりわけ学術的な本が「危機」(あるいは単に「欠乏」)という用語を使っている。本書の脚注部はすでに過剰なほど本の題名をリストしているため、これ以上書籍名は記載しない。概して、これらの文献のほとんどは危機は避けられることを訴えている。

確かに私たちは1970年代のエネルギー危機のような世界レベルの水危機を望んではいない。水は世界的商品ではなく、国際的カルテルも存在しない。中には特にまたレスター・ブラウン氏のように、この2、30年のうちには穀物生産に影響を与える地域的な水紛争が頻発し、国際的な食物価格の騰貴と政治不安の起こる可能性を指摘している人もいる。

ブラウン氏は最悪のケースのシナリオによる価格上昇の予測はしていないが、辻井博教授が本論の中でその予測として、1993年から2020年の間に50%としている22。言い換えれば、おおむね1980年の水準に戻るということである。この数字を別の面から考えてみると、年間約1.5%の上昇で、世界の一人当たりの所得上昇率を十分に下回っている。このため、「最悪のケース」においてでさえも、灌漑設備の改善しやすいにともない、穀物はますます購入しやすくなる模様である。

私自身の見解では、今後アジアの水利用で直面するであろう最大の危機は地域単位

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION