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4.4 衛星系406EPIRB

衛星系406EPIRBは、海上における遭難及び安全の世界的制度(GMDSS)の中心となる機器で、船上に固定して設置されるブイ式の衛星非常用位置指示無線標識である。

船舶の水没時には自動的に浮上して遭難信号を48時間以上にわたって送信する。

このシステムの全体概念は図4-4-1の通りであるが、EPIRBそのものはプラスチックの浮揚筺体及びアンテナから成る本体と、水圧センサー及び架台から成る自動離脱装置で構成されている。この自動離脱装置は水深4mまでの間で自動的に本体を架台から離脱させる。

図4-4-1に新旧の海上遭難・安全システムの概念を示す。

構成および主要諸元例は表4-4-1に、外観および内部構造は図4-4-2に示す通りである。筺体は上部筺体と下部筺体から成り、上部筺体にはメインスイッチと電池を除く全ての構成品が装着され、アンテナは着脱できるようコネクタで接続されている。(アンテナが着脱できないものや筺体内部に内装されているものもある)

船上に固定して設置する方法としては種々あるが、一般的には次の3通りの方法(図4-4-3)が行われている。

?ホイップ型アンテナ形状のEPIRB本体と従来のSOSブイ用架台を組合せたもの。

?面型アンテナ形状のEPIRB本体と従来のSOSブイ用架台を組合せたもの。

?ホイップ型アンテナ形状のEPIRB本体と箱型自動離脱装置を組合せたもの。

衛星系406EPIRBに対する具体的な着氷防止対策は、文献的には見当たらず、新しい装備のため、今後の研究が待たれる。

しかしながら、SOS発信器については、日本海難防止協会の報告書14)にみることができる。この報告書によれば、SOS発信器を架台に装着させた状態で全体をウレタンカバーで覆い、発信器(下部)と架台が接する箇所に電熱器(200W)を設け、カバーと床面に接する箇所を不凍液で被う方法で実験を行っている。

結果は、着氷に関しては、ウレタンカバーのはためきで着氷の成長が周囲の構造物より少なく、カバーの表面に部分的に薄くあっただけであったと報告されている。ただし、SOS発信器全体をカバーで覆ったことにより、海水中での架台からの離脱が100%完全ではなかったとも記している。

国内の調査対象船では、衛星系EPIRBを搭載していた船舶は1隻のみであり、総合的な形状としては?の部類のものであった。

装置全体について、着氷防止策はなんら講じられていない。設置場所はブリッジの裏側であったが、乗組員の説明によれば、着氷が発生する気象状況下では自動離脱装置(架台)より取り外し、船内(ブリッジ)に収納しておくとのことであった。これは、過去2回にわたって着氷と風圧のためホイップ型アンテナが基部より折損してしまったことの経験によるものとのことであり、着氷とは別次元の問題点も提起していると考えられる。(図4-4-4参照) 

海外の調査では、衛星系EPIRBの取り付けに際し、取り付け部に電熱ヒータを組み込んでいるが、その効能のほどは未確認とのことであった。

 

 

 

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