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4.3 航海用レーダ

レーダに関する着氷問題としては、アンテナ部開口面およびその回転部であるペデスタルへの着氷が指摘されており、着氷によってアンテナ部開口面がふさがれる事により電磁波の輻射効率が低下すると共に到達距離の低下を生ずる。またペデスタルへの着氷はモータ回転に支障を及ぼしたり、着氷による重量の増加によりモータへの負荷が増大する等の問題が生ずる。

現段階において、これらの問題点を解消するための方策として2,3の方法が実施されているものの、それぞれ優劣がありあまり決定的なものとはなっていない。

大型船は一般的にはヒータ組み込み方式が採用されているが、小型船、特に漁船においては、コスト的な理由によりヒータは使われず、アンテナ部開口面にビニールシートを巻き付け、これのはためきによる着氷の防止と除去の効果を狙っている。

ヒータによる場合、ヒータの種類としてはコードヒータとネックヒータの2種類があり、それぞれコードヒータはアンテナ開口面用として、ネックヒータはペデスタル用として用いられている。レーダ用ヒータの取付位置はおおむね図4-3-1の通りである。また、ヒータの水密性および耐久性は、レーダという常時回転している機器であることと、船上への搭載機器であることを配慮して特に考慮が加えられている。

図4-3-1にレーダ用ヒータの取付位置概念図の例を示す。

 

ヒータへの電源のON-OFFは、サーモスタットを用いて自動的にコントロールされるが、サーモスタットはペデスタル内部に設置され外気温度をキャッチして作動する方式となっている。

図4-3-2にサーモスタット取付位置図の例を示す。

 

また、ヒータの材質は、一般的にはニクロム線を用いている。

図4-3-3にSバンドレーダ用ネックヒータの概念図の例を示す。

図4-3-4にXバンドレーダ用ネックヒータの概念図の例を示す。

 

ヒータを用いる方法の最大の問題点は、長時間の使用による劣化によって、水密性が低下したり、耐振性の低下によるトラブルが生ずる場合があることである。これらのトラブルの多くは、ヒータそのものの熱による膨張と収縮の繰り返しと、振動によって加わる疲労と劣化によるものと考えられる。

また、ペデスタルの回転部に使用する油脂については、厳寒地で使用するものにはマルテンプPS2などの耐寒用グリスを用いるが、ベアリングメーカによっては指定があるものと思われる。

一方、小型船によく見られる方法としては、レーダのアンテナ部全体にビニールシートを被せるものがある。この方式は、ビニールシート(工事用として市販のもので、主としてナイロン生地にPVCをコーティングしたもの)を袋状に加工して、レーダのアンテナ部にすっぽりと被せるもので、ビニールシート自身の持つはっ水性とシートがアンテナ部と共に回転することによるはためきによって着氷しないという原理を利用したものである。

この方式の問題点は、アンテナ部開口面の着氷は防止出来るが、ビニールシートが短時間で劣化するため短い周期で交換が必要となることである。条件にもよるが、おおむねほぼ半年に1回位の頻度で交換が必要となる。ただし、極めて安価で経済的にも優れた方法である。

なお、ビニールシートによって、わずかに電磁波の透過が妨げられていると解釈されるが、実用上は問題ないと考えられる。

海外の調査船では、たまたま日本製のレーダが搭載されており、ヒータ付となっていた。

図4-3-5にレーダマスト上の着水状況を示す。

 

 

 

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