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4.2 膨脹式救命いかだ

膨脹式救命いかだは、進水方式により投下式とダビット進水式に大別されるが、多くの船舶、特に小型船においては投下式が採用されている。

投下式の膨脹式救命いかだは、FRP製のコンテナに収納され、船体に設けられた進水装置(積付架台)上に取り付けられており、緊急時には手動又は自動で海上又は海中に投下される。

手動投下の場合は、積付架台の引手棒を引っ張ることにより架台にセットされた固縛ワイヤの先端金具が外され、コンテナが架台のレールをころがり落ち、海上に投下される。

また、船舶が一瞬にして水没し、乗組員による手動投下が不可能の場合は、積付架台に設置された水圧自動離脱器の作動により架台から自動的に離脱する。

この水圧自動離脱装置は、水面下2〜4mまで沈むと水圧により作動する。このとき、もやい綱も自動的に船体から切り離される。

図4-2-1に膨脹式救命いかだの船体設置状況の例を示す。

図4-2-2に膨脹式救命いかだ(投下式) 全体装置図の例を示す。

 

水圧自動離脱器(オートリリース)は、図4-2-3の通りで、円盤状の形をしており、片面には水圧穴が設けられている。船が沈んだ場合は、その穴から海水が侵入して、ダイヤフラムに圧力がかかり固縛しているワイヤを解放する仕組みとなっている。

この水圧自動離脱器(オートリリース)が着氷によって作動不能となっては装置全体が死体となってしまうため、日本海難防止協会では対策の研究を行っている。

この研究の報告書5)によれば、電熱器の組み込みが最も有効であったが、さらに効果的にするためには離脱器の形状や機構を着氷しにくいものにする必要があるとしている。

図4-2-3に膨脹式救命いかだ(投下式)用水圧自動離脱器の例を示す。

 

コンテナに折り畳んで収納されていた膨脹式救命いかだは、充気装置(ガスボンベ)の作動により自動的に膨脹するが、この充気装置(ガスボンベ)はコンテナに内蔵されて着氷から保護されており、また膨脹用ガスは炭酸ガス(CO2)と窒素ガス(N2)が混合されたもので、-30℃から65℃までの範囲で作動可能なものとなっている。

今回の国内調査船では、いずれの船舶もなんらの着氷防止対策は採られておらず、乗組員によって掛矢や木製の槌によるハンマリングで除去していた。

特に、膨脹式救命いかだは大型の槌が使えないため、小型の木製ハンマーを使って、装置を破損しないよう注意深くたたき落とす作業をしている。(図4-2-4、図4-2-5参照)

また、海外調査船では、実船に乗船できなかったので聞き取り調査となったが、一部の船主から着氷防止用の特殊ペイントを塗布しているとの発言があった。

 

 

 

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