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第4章 着氷防止・除去技術の現状

 

着氷防止および除去技術の現状を把握するため、これまでに公表されている文献を出来るだけ多く集め調査した。

調査にあたり、当初は「防止」と「除去」とは各々独立した個別のテーマであるとの観点に立ち実施していたが、多くの研究家はこれらを独立のものではなく一連のものであるとの見解に立っていることが判明したため、当委員会も「防止・除去」として取り扱うこととした。

また、実船での実態を調査するため、国内、国外にサンプル船を選定して調査を行うこととし、国内においては、作業環境や地理的条件の特性から北海道地区の北洋漁船に、海外においては極寒での経験が多く、このテーマに造詣の深い北欧に候補を求めて実施した。

このサンプルが船舶全体の傾向を示すのに妥当か否かは不明であるが、少なくとも実験船ではなく現実に稼働している船であるので、一つの指向性を表しているものと考えられる。

一方、対象となる甲板上の機器類は、実際の船舶においては各船固有の設備もあり、千差万別とも言えるが、最重要課題である膨脹式救命いかだ、ライフボート、船灯類また、1999年2月1日よりGMDSSが完全実施されることとなり、これに関する救命設備(特に406EPIRB)、航海設備、通信設備等の着氷対策が切に要望されている。

そこで、今回の調査対象を次の機器に絞り込み実施することとした。

 

?救命艇

?膨脹式救命いかだ

?航海用レーダ

?衛星系406EPIRB

?アンテナ

?船灯類

 

1971年に日本海難防止協会が発行した「漁船等の着氷海難防止対策に関する研究」の中間報告書14)

によれば、遭難自動発信器の着氷時における自動離脱および発信実験が行われている。また、同報告書によれば、空中線用電線にニクロム線ヒータを入れたものを使用したとのことであり、さらに同協会の完了報告書5)では、膨脹式救命いかだの自動離脱器についても実験した旨の詳細な報告がなされている。

収集した文献の中では、甲板上の機器類を対象として研究したというものは、この報告書以外には見つけることはできなかったが、一般的にも機器についてはあまり研究がなされていないようである。

一方、レーダの製造メーカにおいては、スキャナ部の着氷防止のためスロットアンテナの輻射面に格子状のヒータを組み込み、また回転部分にはネックヒータを取り付けた機器を開発し、実用化している。しかしながら、この装置も決め手とはならず、現状では、現場において試行錯誤を繰り返しながら対応している。

 

 

 

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