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(3) 生理・生態

A.ramarenseが増殖する好適水温は海域によって異なります。例えば、カナダ東海岸では8〜12℃、伊勢湾では4月の9〜16℃、広島湾では4月の12〜14℃です。一般に底水温、高塩分の環境がその増殖に適していますが、水温だけでいえば温帯域の沿岸のどこに出現しても不思議ではないわけです。瀬戸内海においても、当研究所の山口らの調査によって、これらのシストがそのほぼ全域に分布することが明らかになっています。

 

有毒プランクトン研究室の新設

前述した貝類毒化現象の西日本海域への拡大傾向を憂慮し、県水産試験場や地域水産業界から、貝毒被害の防止に関する研究や指導体制の強化について強い要請がなされてきました。そこで、赤潮プランクトンの研究で豊富な知識と技術を培ってきた南西海区水産研究所赤潮環境部に、貝毒と有害プランクトンの調査研究において西日本の拠点となる研究室が新設されることになりました。そして、平成6年10月に赤潮環境部の第4番目の研究室として「有害プランクトン研究室」が発足致しました。

当研究室としては、有毒プランクトンの生理・生態に関する基礎研究や発生予知法の開発、沿岸海洋生態系における毒成分の挙動並びに影響の評価・等を当面の研究目標にしております。また、平成10年度からのスタートを目標として、貝毒に関連するプロジェクト研究を計画しており、東北区水産研究所増殖漁場研究室(貝類の生理・生態、毒成分の代謝)、中央生産研究所食品保全研究室(食品加工と毒成分分析)とともに、研究レビューと情報交換を始めました。

施設建設室ということで、今回は研究成果の紹介というわけには参りませんでした。しかし、今後は、水産庁漁場保全課および瀬戸内海漁業調整事務所との連帯のもとに、各県水産試験場にご協力いただいて、貝毒に関連する事業及び調査研究の発展に努力していただきたいと思います。有毒プランクトンの生理・生態研究というめんから、貝毒の被害軽減に役立つような研究成果を積み上げることによって、貝類の増養殖事業に貢献したいと考えております。

 

出典;水産庁南西海区水産研究所『研究所ホットライン50号』

 

 

 

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