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しかしながら、海洋生態系については、系の構造や生物種の実態、および生物・生態系を含めた物質循環について研究が待たれている状況であり、基礎科学的な研究の推進が一つの大きな課題である。生態系を急激に改変させるような大きな影響が予想される事象は、埋め立て、港湾建設などの沿岸開発にとどまらず、温度や汚染化学物質など様々なものが考えられる。さらに、それらが組み合わさって大きな環境変化を引き起こす問題も指摘されており、適切な対策を講ずるためには、生態系の動態および生態系への影響を長期的に監視・観測(モニタリング)していかなければならない。適切な監視・観測手法はまだ十分開発されておらず、監視・観測手法の開発を最重要課題として協力に進めていく必要があることは、環境庁他各種の調査研究報告が指摘する通りである。

その上、自然環境を保全し、持続可能な発展を進めるためには、情報の統合化を進めていくことも重要である。監視・観測データを基に生態系への影響を評価・分析し、総合的なモデルを構築し研究を進めていくことが求められる。

 

(4) 赤潮、青潮

赤潮の問題と貧酸素水塊の問題は、現象としては大変重要な問題であり、全く解決してはいない。赤潮は永遠の課題とも言われるが、近年は貝毒も非常に大きな問題となっている。養殖のカキやアコヤガイの被害も目立ってきている。発生機構の解明と、対策を推進していく必要がある。

 

(5) ゴミや汚染物質による海洋汚染問題

人間の活動によってもたらされたゴミや汚染物質によって、海洋汚染は深刻さを増している。海洋汚染物質の多くは、陸域で排出され、海域へ流されたものである。その種類も、窒素・リンなどの栄養塩、水銀・鉛・カドミウム・クロムなどの重金属、農薬・洗剤・洗浄剤などに含まれる難分解性物質、原油・石油製品などの鉱油類、船底塗料などの有毒物質と多様である。できる限り早期に汚染物質の排出源、排出量を把握、予想し、対策を検討する必要がある(図 4-3)。

 

 

 

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