平成6年度の魚種別個別経営体の調査結果が農林中央金庫水産部によって報告されている。いずれも標本として数件から十数件の漁家実績を集計したものであり、これが必ずしも、全国の現状を表すものではないが、貴重な参考資料として3-4-6表に記した。
養殖を技術産業と位置づけ、着実に成果を上げている欧州の業者には、日本への資本上陸を真剣に考えているところもあるという。ここでは、これら欧州とわが国の養殖法を、コスト面で対比しながら検討してみる。3-4-7表はギンザケの海面養殖における日本とチリとのコスト比較を行ったものである。どちらも従来型の海面生費方式であるが、生産に要する直接コストはキロ当たり200円程度も違う。その原因は、種苗価格であり、餌代であり、歩留まりである。一経営体当たりの生産数量は日本が64トンであるのに対して、チリでは1,500トンとなっており、人件費等の間接経費を足して行くとさらにコスト差が拡がることになる。
ノルウェーにおけるアトランティックサーモンの場合でも、生産コストは、キロ当たり375円程度と、日本のギンザケよりも100円程度安くなっている。3-4-8表は各国でのウナギ生産コストを推定試算したものである。種苗代が日本ウナギと西欧ウナギでは大きく異なるため、単純比較はできないが、種苗代を除いた餌代やエネルギー代も、日本が高くついていることがわかる。