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3.3 養殖対象魚種の特性調査

 

3.3.1 養殖魚と環境 11)、12)、13)、14)

現在の海面養殖業者が魚類養殖の際に最も気を使うのは、水温と漁場の溶存酸素量(DO)であろう。水温が低下すれば成長率が悪くなるし、溶存酸素量が低下すれば魚の摂餌が悪くなったり、斃死ともなる。現在の養殖方法では、水温については自然の力に委ねるしかないが、溶存酸素量については、漁場の底質の改善や生簀数の限定、あるいは、養殖密度の軽減等の工夫がこらされてきている。

<水碑>

水温は魚の生理代謝速度、呼吸酸素消費量、DOの飽和溶解量と速度等に大きな影響を与えるとともに、成長速度を左右する重要なファクターである。それぞれの魚種が最適温度帯を持っているので、適水温を調整することで魚の成長を管理することは容易であるが、温度管理のために過剰な投資やエネルギー代の急増があっては産業レベルとしては適切ではない。現在行われている水温コントロール方法としては、地下水の利用、深層海水の利用、予備貯水槽での自然放熱・放冷、ヒーターによる室温調節、ヒーターによる水温調節等がある。

<塩分>

塩分はDOの飽和溶解量に影響するとともに、魚種によって濃度適正が異なる。ギンザケの場合は淡水で育てたスモルトを海水に馴れさせるために、塩分濃度を段階的に高めることが必要である。また、ウナギもクロコ期には病気対策あるいは、体力回復のために2%程度の塩水で飼育する方法がとられている。

<PH>

一般的な適性範囲は淡水魚で7近辺、海産魚では8.2近辺である。PHはDOと同様、飼育現場で最も簡単にチェックできる検査方法であり、水質の状態を端的に表す指針となっている。海水での陸上循環養殖の場合は、アンモニア等を硝化する好気性細菌によって生成される硝酸塩により、酸性側に移行する。アルカリ度が枯渇すると、アンモニアの酸化が行われなくなるので炭酸ナトリウム(4%程度の溶液)を補給する必要がある。

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