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現在、わが国の種苗調達方法は、大きく三つに分類される。第一はハマチやウナギ種苗に代表されるように主として天然の稚魚に依存するもの、第二にはカンパチ、ハタ類のように主として国外からの輸入種苗に依存するもの、第三にマダイやヒラメに代表されるように、主として人工種苗に依存するものである。人工種苗による養殖では、生産コストに占める種苗費の割合は、10%内外と低減の傾向にあるが、人工種苗生産の確立されていない魚種や、カンパチ、ハタ類など輸入魚種の場合は、25〜40%と依然として大きい。天然種苗の場合、ハマチのようにモジャコの採捕量が年によって変動したり、ウナギのようにシラス採捕量が減少し、養殖事業の収支を大きく狂わせる危険性が大きい。また、輸入種苗については、病原も共に搬入する恐れがある。

以下主要な養殖魚種の種苗調達方法をまとめる。

マダイ 100%人工種苗であり、海産魚種の中で最も種苗生産技術が進んでいる。成長の速い親魚を選択し、それを成熟させて産卵・孵化させている。周年採卵も可能となった。

ヒラメ 100%人工種苗である。親魚を成熟させて産卵・孵化。周年採卵もほぼ可能。

ブリ ほぼ100%が天然種苗。

カンパチ 100%天然種苗。現在日本に輸入される種苗は1,200万尾程度といわれているが、その6割は海南島からのもの。

マアジ 人工種苗も技術的には可能だが、天然の種苗の入手が容易であり、今のところは100%が天然種苗。

シマアジ ほぼ100%が人工種苗。天然親魚を採捕し採卵。

トラフグ ほぼ100%が人工種苗。

ギンザケ 約80%を輸入発眼卵に依存。20%は国内で養殖親魚から採卵。

クルマエビ 100%人工種苗。天然親エビを採捕し採卵。

 

ロ)海産魚類の育種研究

(1)交雑 種間・属間・科間での交雑で、タイ類、フグ類、イシダイ類、カツオ・マグロ類等で試験され多くの交雑種ができた。一部の種を除き養殖対象品種とはなっていない。

(2)選抜育種 マダイ・ヒラメ等で成功し、良好な成果を上げている。マダイでは、明石産の天然魚を原種として代々成長の速い個体を選別・育成し、通常のマダイに比べて30〜40%成長が速い品種を作り出している。

(3)染色体操作

?雌性発生 ヒラメのように雌が雄よりも成長が速い場合、雌のみを種苗生産して養殖した方が良い。そこで、染色体の操作で母方の遺伝子だけで個体を発生させる磁性発生に関する研究が進められている。ヒラメ、マダイ、カワハギ類では技術が確立されている。精子の遺伝的不活性化と、染色体の倍数化が技術的なポイントである。

?倍数性育種 種を不稔化して成熟に要するエネルギーを成長に向けようという方法で、三倍体がその一つ。通常の受精操作を行った後、低温ショック等により第二極体放出を阻止することで作り出される。タイやヒラメでは本方法が確立されている。

(4)遺伝子操作 特定・単離した遺伝子を顕微注射あるいは、電気穿孔法により受精卵に注入し、染色体に組込ませる技術。

 

 

 

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