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の設置場所は湖の流れの良い沖合に設ける必要がある(DO濃度が5.7mg/l以上なら正常摂餌を行うが、4.3mg/l程度になると摂餌不振となる)。ブリ養殖用の稚魚は天然物のモジャコに100%頼っている。ハマチ養殖漁家は春から初夏にかけて、まずモジャコを買い付けるが、平成8年、そして本年とモジャコの採捕量が減少しており、買付価格が上昇している。さらに、毎年必ずどこかの湾で発生する赤潮被害と、成魚の市況下落もあって、ブリ養殖の経営は厳しくなっており、養殖漁家数は急減しているのが現状である。

 

鹿児島県におけるブリ養殖の例

水温 12〜29℃と季節差が大きい(ブリの適水温は、1年魚15℃以上、2年魚で14℃以上、3年魚で13℃以上。上限は30℃といわれている)

飼育 4月 10〜20gの大型モジャコ買付

8月 550g、池入れ1ヶ月からEPを1回/日投与

9月 750g、マイワシ主体のEP投与。9〜10月に金網生費に移す

翌3月 1,100g、3つの生簀に分養

7月 2,000g

10月 3,500g

翌々年3自 体重5,000gサイズで出荷開始。

 

ブリの成長は、水温と大きな関係を持つ。たとえば同じ九州地区でも、冬期水温が低い長崎地区では、4月に生簀に入れたモジャコは、年末には600〜800gにしか成長しないのに対して、冬期水温が暖かい鹿児島、錦江湾では1,800〜2,000gにまで育つ。両者の冬場の水温の差は、3〜4℃程度である。同じ九州地区でも、5kgサイズのブリに育てるのに1年程の成長期間の差が出ており、それぞれの地域で工夫をこらした飼育方法や出荷方法を取り入れている。例えば、錦江湾はいつもブリの値がはる10〜11月に5kgサイズに仕上げることを念頭において、2月までには出荷を終える。東町は年末から2〜3月にかけて出荷し、1Kgサイズ(当歳魚)、3Kgサイズ(1歳魚)の小型で余分な魚を、この時期に中間魚として四国や大分に出荷する。熊本(天草)も年末出荷が中心で、春先までには野ジメでの出荷を終える。長崎県は、一部年末に出荷するが、主体は2月から6月初旬までで、産卵が始まる前に出荷を終える。

鹿児島、熊本は5Kg以上が出荷の中心で、主として切り身商材として扱われ、長崎、大分の魚は4Kg前後が中心で、主として刺身商材として扱われる。身の脂質の関係で使い分けられるということである。ブリの他種に無い特徴は、3Kgを越えるとたとえ10Kg以上になっても商品価値が無くならないことである。すなわち、生産者にとっては、市況が悪い時には餌を控えて出荷を遅らせ、市況回復を待って出荷出来るという利点がある。このことは逆に、在池量の把握を難しくしており、一見品薄に見えても値が上がり始めると、どこからともなく荷が集まりだすという現象を起こし、市場や仲買業者の不信の的となってもいる。

 

 

 

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