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次に考えられるのは、近年の赤潮と魚病の発生による、養殖魚の大量死と、その対策としての粗放型養殖への転換である。各地の養殖場は、海域の富栄養化の問題を抱え、これまでのような過密養殖は許されない状況になっているが、かといって、これまでの生産量を維持するために、養殖場を増やすことはままならない。わが国で養殖を行う場合、区画漁業権が必要で、これは、漁業協同組合の漁業権行使規則の中で厳密に制限されており、やる気のある参入者がいても、なかなか門戸を開かないという問題がある。必然、廃業した漁家から漁場使用権を借りることになるが、これも、漁業優先の種々の壁を乗り越える必要があるし、何よりも借用料がばかにならない。鹿児島県のある地域では、20メーター四方の海面を借りるのに250万円程が必要とのことである。それでも、廃業した漁家から、現存の漁家への転換は徐々に進んでおり、近年の経営体数の減少につれて、一経営体当たりの漁場面積は少しづつ増えてきている。この転換が完全に終了し、さらに、新たな参入者のために新漁場を開拓できた時に、国内生産量は、再度上昇カーブを描くことになる。

 

日本の内水面漁業と養殖

1995年の内水面漁業生産量は9万2千トン、内水面養殖生産量は7万5千トンであった。養殖の主な魚種はうなぎの2万千トンであるが、うなぎ養殖は、シラスの不漁による高値と、中国やマレーシアなどの増産で、経営が圧迫され、ここ数年、生産量は減少している。

次にマス類(17千トン)、コイ(13千トン)、アユ(11千トン)の順であるが、いずれの魚種もここ数年、生産量が減少している。減少の原因としては、消費者の嗜好の変化による需要の減退と、魚病による斃死等によりコストが合わなくなって廃業するところが増えたためと思われる。しかし、最近の内水面養殖は、ヤマメやイワナ等、数量は少ないが特殊性のあるものが増えており、今後、減少速度は緩くなってくる。

 

日本における循環式陸上養殖の現状

情報は十分ではないが、わが国においては、循環水を使用しての陸上養殖は、種苗生産を除いては、まだまだ普及しておらず実験段階である。これまでに知り得たところを下記する。

イ)ユナイテッド ケミカル プロダクツ社 千葉県横芝町でヨーロッパウナギを養殖。年産30トン程度。

 

 

 

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