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7.2 アクチュエータシステムの評価と課題

CPPにフラップ舵、バウスラスタを組み合わせたアクチュエータシステムの評価については港内操船に対してはすでに述べた。CPPの採用に対するもう一つの理由は荒天時の耐航性の向上である。

本格的な荒天時のデータの解析が途上にあり、就航率の違い等の定量的な評価は今後の解析に期待したいが、波浪中の性能を見ると、動揺に応じてピッチ角の制御が有効に機能し、主機の回転数は一定に維持されている。主機の負荷変動が少ないと保全にも有利とCPPの優れた波浪中性能が確認されたと考えてよい。

 

7.3 機関室機器モジュールおよびMO仕様によるワンマンオペレーションにおける課題

本船の特徴の一つである機関室のモジュール化は適切な設計と工場内製作による信頼度の向上、整然とした機器配置、分かり易いパイピング等で操船者に好評である。また、造船者に対しても建造工期の短縮とかの評価される貢献をもたらした。このようなモジュール化は工場内製作の標準化を志向するから最終的には量産によるコストの低下も期待される。

MO化はモジュール化による機器の信頼度の改善による機関室の保守の容易化、アラーム回数の減少等もあり、機関士の負担の軽減に貢献した。機器の運転切り換え時のアラームを除くと故障等によるアラームは回数が大幅に減少している。機関士は機関室内での点検作業の他には操縦室での監視を担当しているが、仕事は減少して、航海士との負担のアンバランスが目立つ結果となつている。点検の問題を別に考えるとすると、監視と操作という観点からは機関士の操縦室内作業は大変に軽減されたと言える。機関士と航海士の負担のアンバランスは極めて顕著である。

機関室モジュール化や統合操船システム化は造船業あるいは舶用工業に対しては製品の高度化、建造工程の合理化や現場の技能への依存の軽減、更には標準化量産化によるコスト削減に有効である。

 

7.4 総括

個々の近代化技術の評価とその課題については、すでにそれぞれのところで述べたので、それらを総合して本実証船の近代化の評価を要約する。

人間の介在する操船の評価は個体差や適応等の問題があり、容易でない。特に操船システムが変貌を遂げ、なじみがない条件下では慣熟に時間がかかるようで、現時点でもシステムをまだ使いこなすには到っていないから、本船の最終的な達成度の評価には実績不足の段階にある。しかし、機関室の操作は容易になり、負担は軽減されており、他方では統合操船システムで航海の負担も軽減されているから、本事業で目標とした航海中における操縦室内の操船のワンマン化は現実性があると評価される。現在でも夜間には一人で担当されている。もちろんのこと、少なくとも必要なレベルの機関システムの保守点検は別途考慮されることを前提としている。

また、船とその運航にあたる人間は一つのシステムとして管理するという立場から、船側のシステムの機能の大幅な高度化が進みつつある現在では、その状況に応じた運航者の管理が望まれる。

 

 

 

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