日本財団 図書館


2.2 内航近代化実証船の近代化設備

2.2.1 仕様の検討

本事業では、平成5年度および平成6年度において当財団が策定した内航近代化船の試設計の基本方針を踏襲しつつ、内航船の近代化の課題を明確にして、ワンマン操船を可能とする統合操船システムを装備したブリッジ、MO仕様でモジュール化された機関システム、および快適な居住区に必要な機能をとりまとめ、その設計と開発を行った。

 

(1) 内航船をめぐる情勢と近代化の課題

内航船をめぐる情勢

内航船の近代化を推進するには、今日の物流が内航輸送に要請していることを正確に受け止め、内航海運や造船業が直面している問題点を打開して行くような技術の開発とその実績の把握に基づく普及の推進が必要になる。その意味で、先ず、内航船を巡る情勢について簡単に要約した後に、近代化の課題を整理する。

まず、荷主側から内航海運に課せられた要請は多岐にわたるが、トラックなどに競争力を持つには、特に次の点に着目する必要がある。

 

?内航海運の提供しうる輸送サービスの品質改善が必要で、特に定時性や信頼性の向上が主眼となる。また、荒天時の耐航性の向上や港内操船性能の改善が必要になる。

 

?国内産業からは内航海運に対して強いコスト削減の要請がある。内航海運の置かれた状況については、すでに多くの指摘があるが、少なくとも次の点に着目する必要がある。

ア) 日本経済の先進国化、相次ぐ円高の条件下で内航海運のコスト構造に大きな変化が生じており、生涯コストに着目したコスト低減への努カが要請されている。先進国産業全体の趨勢であるが、その中で人件費の相対的な増加が顕著となり、コストの低減には省力運航の必要性が増しつつある。安全性を確保しつつ、運航の省力化を進めるための運航技術の整備が必要になる。

イ) 内航船員の年齢構成の逆ピラミッド化が顕著になり、今後の船員の確保が心配される趨勢になっており、魅力ある待遇と将来性で若者を確保し、永年の経験に過度に依存しないで安全性が保てる船舶運航技術の近代化や訓練方法が求められている。

造船業は厳しい国際競争下にあり、建造コストの国際水準化が要求されるとともに、労働力の年齢構成の逆ピラミッド化の進行も顕著で、現場の技術へ過度に依存した建造方法から脱却する必要が増している。

また、安全性向上への要請は強く海運に課せられており、同時に、環境保全への要請も次第に強化される趨勢にある。海難による海洋汚染の防止は特に強調される必要がある。

他方、内航革新を進める上で極めて重要なインフラの整備が進行していることに着目する必要がある。その一つはGPSサービスの普及で、特に、海上保安庁によって推進されているDGPSの公共サービス、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION