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ウェーは、油流出緊急防災システムの有効性を評価するための四つの簡単な基準を設けている。これはもちろんより洗練されたものとすることもできるが、単純なシステムの利点は伝達及び理解が容易なことである。我々が適用している四つの基準は次の通りである。

* 対応時間

* 処理能力

* 専門的技能

* 耐久性

対応時間とは、油流出事故の通報を受けてから組織が油の回収作業又はその他の緩和策を開始するための準備を整えるまでの時間である。これは例えば、石油掘削業務に対しては一般に24時間以内と定められている。しかし特に影響を受けやすい地区の場合には1時間以内と定められており、そのためには実際には石油掘削施設に特別の船舶を待機させておかなければならないことになる。企業はその緊急防災計画に対する必要な承認を得るためには、この要件を満たすことができるという推定的根拠を用意しなければならない。演習によって、それが実際に要件に適合するかどうかを示してもよい。この基準は国が現在使用している油流出緊急防災システムにも適用することができる。例えば、油流出事故が特定の地域において発生した場合には、その対応に要する最大時間はX時間であるというような言い方をする。環境の脆弱性の相違によって、同一海岸でもそれぞれの部分がそれぞれ異なった対応時間になることもある。

処理能力とは異なる環境条件のもとでその機材が単位時間当たりどれだけの量の油を処理できるかを示す尺度である。これは油流出緊急防災システムに組込まれた機材が一定の気象条件のもとで一定時間内にオイルフェンス及び回収装置によって回収できる油量を定めるための基準である。もし実際の状況下で、機材が所定の処理能力を示すことができれば、その機材は作業者の期待に添ったことになる。

専門的技能とは流出油の処理作業を実施するための技能水準及び有資格者の召集能力である。技能水準は、実施される特定の教育及び指導の種類によって定められる。有資格者の召集能力とは、緊急事態において企業が前記水準の経歴を有する人員を何人動員できるかを意味する。緊急防災計画の承認を得るには、この基準に沿って、企業は一定数の従業員に流出油処理について定められた教育プログラムを受けさせなければならない。

耐久能力とは、組織がどれくらいの期間その処理能力及び専門的機能を低下させることなく流出油処理活動を効果的に遂行できるかを示すものである。この基準は準備すべき流出油回収システム数及び作業員チーム数を決めるのに用いられる。

これらの基準を適用するには、幾つかの要件を満たさなければならない。これらは特に緊急防災システムが満たさなければならない特定の要件を決定する場合の基礎として使用することができる。これは、緊急防災計画策定時の政策上の意味合いにおいて、緊急防災システムの一般的目標をより現実的な水準に引き下げるために有効である。これは関係者全ての利益につながるものである。

 

2. 緊急防災計画策定における法律上及び組織上の問題

緊急防災計画策定に関する法的規定は、上部レベルにおける緊急防災システムをいかに組織するかの出発点である。本論文においては、ノルウェーの緊急防災システムがどのように規定されており、組織的対応が法的要件を満たすためにどのように定められているかを以下に説明する。

 

 

 

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