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◆質問:ホーチミン市建築技師長

東北大学稲村肇教授の講演「工業化のための物流の役割」のなかで、ヴィエトナムは大都市の工業化を優先されるべきとの指摘があった。しかし、このことは大都市への産業の過度の集中を促し、アジア各国の大都市で問題となっている超都市問題やこれに伴う社会問題を引き起こすのではないか。今後、全国的な都市計画が策定されない限り、ホーチミン市は不利な発展を遂げる危険がある。

 

◆回答1:東北大学 稲村肇教授

ホーチミン市内そのもののことではないが、ニューシティセンターのような機能をホーチミンにあまり遠くない地域に集積させてはどうか。

日本の工業整備特別地域も、大都市圏を避けて大都市圏からそれほど遠くない地域で地域開発を行った。この点については、大阪産業大学今野修平教授がご専門なのでご意見を頂戴したい。

 

◆回答2:大阪産業大学 今野修平教授

近代社会の中で、所得を上げて雇用の場を開発していくということは、稲村先生が説明したように、工業化、インダストリアリゼーションが本流である。しかし、工業が地域に定着するためには、それなりのインフラ整備が進んでいなければならない。しかし、工業化、インダストリアリゼーションで一番救いたいのは、稲村先生が冒頭で指摘した、貧しい階層、貧しい人たちである。従って、工業化をしていくときに、インフラ整備の水準が低い地方に立地させるのか、インフラ整備がある程度進んでいる大都市内または大都市近くに立地させるのか、どちらが良いのかは、今日までの世界的な政策論の中で、大変に答えの出ない議論が続いている。

先ほど、稲村先生がご説明された日本の事例は、新産業都市建設計画と、工業等特別整備地域、2つの政治政策を1962年に発足させたという内容であった。(時間の関係で先生は詳しい説明を省かれたが、)新産業都市建設計画は、今までの歴史の中でインフラ整備が進んでいない地方に、工業化を目的として作った政策である。

これに対して、工業等特別整備地域というのは、既存の大都市との関連を持ち得る、当時の言葉で波及効果のある範囲内に立地させようとした工業である。インフラ整備が比較的小さくて済み、人材供給が大都市から簡単にでき、そして技術のトランスファーも比較的容易であるという判断で選んだところであります。ただし、ご指摘のように、開発効果が大都市に出て、大都市はさらにスプロール化していくというマイナス面を持っている。

これに対して新産業都市は、今までインフラ整備、人材供給、技術のトランスファーの能力が欠けていたところであり、新しく工業化したいという政策的熱望が高いと

 

 

 

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