5. 総括質疑応答
◆質問:ヴィエトナム運輸開発戦略研究所 レ・クア南支局長
日本の都市交通、ヴィエトナムの都市交通システム整備の方向性を講演していただきたい。
◆回答:東北大学 稲村肇教授
1.ハノイ市とホーチミン市では、地下鉄の整備が必要と考えられる。
2.高架の都市内高速道路の整備が必要と考えられる。都市高速道路は、港湾、空港にも連絡する。
3.マレイシアをはじめとするアジア諸国では、BOT方式(Build,Operate,Transfer:プロジェクト会社が施設を建設し、施設を一定期間運営した後、政府側に譲渡するもの)のインフラ整備事業が盛んに行われているが、ヴィエトナム側にとってBOT方式は、あまり望ましいとは考えてはいない。
◆質問:ヴィエトナム南部交通運輸建設局長
東北大学 稲村肇教授の指摘のように、BOT方式(Build,Operate,Transfer)が、ヴィエトナムにとって良くない運輸インフラ整備方式なのはなぜか。ヴィエトナム政府は、BOT方式を良い方式として主張している。では、どのような投資方式がヴィエトナムの運輸インフラ整備に適しているのか。
◆回答:東北大学 稲村肇教授
BOT方式が成立する事業は、企業的に成立する事業である。企業的に成立する事業なのであれば、なぜ政府企業が融資を受けて事業をすすめられる。マレイシアにおいては、利益のあがる事業だけがBOT方式で行われ、他の部分についてはほとんど建設が進んでいない。そこで、マレイシア政府は、BOT方式で民間企業が建設してくれない部分に補助金を交付しようとしている。つまり、企業的に成立する部分は、正しい計画と健全な運営があれば方式に関係なく事業化は可能である。
最も問題なのは、BOT方式はそれぞれの企業集団によって事業が進められることである。それらの企業集団は、各企業が最も利益を上げられるように受注する。バンコクの鉄道整備のBOT方式の事例をみると、(様々な企業の方式が混在しているため)車両の交換や乗り換えに不便が生じている。
BOT方式を全面的に否定するわけではないが、BOTの導入には経験と適正な計画が必要と思われる。