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均衡がとれ、かつ合理的な運輸システムを整備するかを明示的に検討しなければなりません。経済社会の発展に歩調を合わせるように、パイプラインは別として鉄道、内水面舟運、航空、道路といった伝統的な輸送手段の調和的で均衡のとれた、相乗効果的な整備が行われなければなりません。

皆様のお時間をいましばらく拝借して、バンコク市の話を繰り返します。バンコクでは、そもそも都市道路網と都市鉄道網とが相互調和的に整備されて来なかったがために、いまになって巨額の投資が必要となったのであります。従って、ベトナムおよび他の国々の運輸システムは、相互調和的かつ経済的に整備されなければなりません。

この点を繰り返し申し上げるのは、以下の理由によるものであります。

●日本からの専門家の方々はこれから鉄道、内水面舟運、高速道路についての報告を行うことになっていますが、私は、このセミナーでの発表や議論が、先刻申し上げた我が国運輸セクターの目指すところに沿ったかたちで進められることを期待しているのです。

●私はまた、我がベトナムの政策・計画担当者達が運輸セクター全体を管理するためのシステムばかりでなく、個々の輸送モードを運営するためのシステムも確立できるように、日本の専門家の皆様が協力・支援して下さることを希望しております。例えば、我が国の鉄道部門はその施設、組織、管理をどのように改革すべきであるのか。将来、どのように高速道路網を整備し、管理・運営するべきであるのか。これからベトナムがゼロから始めなければならない都市交通については、どのように管理・運営すべきであるのか。

最後に、強調したい点があります。ベトナムの運輸セクターの目標は、如何にして相互調和的、効果的かつ経済的な運輸基盤施設を整備するかにあると申し上げました。しかし、これはまだ、われわれのやや漠然としたアイディアや希望を述べたものであって、具体的な内容があるわけではないのです。従って、今後この考え方を数量化することが重要なのです。我々は、数値目標や規準を設定し、相互調和とか、効果とか、経済性を人々に説明できるようになる必要があるのです。つまり、運輸交通整備に係わる規準を数量的、具体的に表現できるようにならなければならないのです。これは、我々にとって、いわば「文盲の克服」にほかなりません。「文盲」とか「無知」という言葉を敢えて強調したいと思います。運輸セクターを効果的に整備するための具体的規準や標準を設定できるように、我々は日本からいらした先生方のご教示を切望しております。運輸基盤施設の建設・改善に係わる政策は、そのような具体的規準に従って策定されるべきものでありましょう。

我が国の特定の運輸経営体を担当する局長とか総局長に対して、誰かがその数量的規準や運輸経済的平均水準について質問したとしても、具体的かつ正確な答えを得ることは無理でありましょう。TDSIですらも、その標準システムをまだ確立するに至っておりません。であるからこそ、日本の専門家の方々から学びたいのであります。

以上、開会の辞に加えて、ベトナム運輸省指導部の考え方を説明させて頂きました。できれば、日本の専門家の方々が準備してきた報告が我々の要望に応えるべく内容的に補足されることを望んでやみません。

いま一度、日本からいらした専門家の方々、JTCAの理事長及び日本国大使館からの代表参加者、そして日本財団の関係者の方々に対して、ここに謝意を表するとともに、このセミナーが成功裏に終わることを心から祈るものであります。

 

 

 

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