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(2) 独立した個人の暮し

一つの家に生活する人の数は2人が適正です。同性異性に関わらず、親しい1人を選ぶことは誰にもできるでしょう。ですから、一つの家に4人がまとまって暮らすのではなく、できれば隣合わせの二つの家(マンションやアパート)にそれぞれ2人ずつ暮らして、それをまとめて一つのグループホームとするわけです。世話人は少し大変でしょうが、両方の家を行き来することになります。食事や団らんは、本人たちが希望するなら、一緒にしても良いでしょう。日によっては変えることもできます。

もう一つ、この方式の利点は、異性が1ヶ所のグループホームに同居できることです。ひと組を男性、もう一方を女性にするわけです。「暮し」は異性が混ざりあったほうが自然だし、日常に穏やかな和みが生まれます。それなりのトラブルも起こるでしょうが、暮しの積みかさねの中で、彼らは互いに協調する大切さを覚え、自分でその危機を乗り越えていきます。異性の同居は、一つの屋根の下では難しいでしょうが、屋根を二つに分ければ可能になるわけです。

また、入居者の中には、援助が必要ではあるけれど、どうしても1人で暮らしたい人や、1人で暮らす方が良い人もいるでしょう。その場合もこの方式は有効です。つまり、家を分けて、1人が独立した形をとるのです。この場合、さすがに食事だけは1ヶ所にまとめているようです。

4人の他人が一つの家に暮らす形態は、この国の建築様式では、どだいまだ無理なのです。それよりも、一つの家にこだわらず、上記のような方式をとれば、自由自在な「独立した個人の暮し」が、グループホームでも展開されるでしょう。

 

(3) グループホームとレスパイトケア

ある地域で、4人が暮らすグループホームに、レスパイトケア(家族の休息のための一時あずかり)を受け入れていると聞きました。平穏な家庭の団らんに、不意の客が入れ替わり転がりこむような無茶な話です。設置経営する者には一石二鳥の好都合ではあっても、そこに生活する者にとってはさぞ迷惑なことでしょう。レスパイトを受ける側にとっても、窮屈な1日であるはずです。本来、この二つは、似て非なる目的をもつ事業なのです。

しかし、大阪のある小さな親の会が設置経営する、重い障害をもつ人たちのグループホームで、この二つの異質な事業を、みごとに合体させている好事例が2か所もあります。

その秘訣は、二つ共に、緊密に結ばれた少数の親の仲間の信頼と協力にあるようです。20数名の親たちがそれぞれに資金を持ち寄って、まず作業所を作りました。それから10数年が経って、高齢や病弱などのために、家庭では子どもを守りきれない仲間の要望があって、作業所の近くに小さなグループホームを始めました。

集まった入居者たちは、新たに雇い入れた援助者と共に、親たちの仲間が交替で支えます。そのかわり、必要なときに必要に応じて、自分たちの子どもを、随時そのグループホームへ預けるのです。そこに暮らす人たちにとって、一夜の客人は、決して迷惑な侵入者ではありません。日ごろの親しい仲間です。終日の職住同一は少し気になりますが、生活する人たちの団らんの輪が一回り大きくなることでしよう。

 

 

 

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