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途端、恐怖や不安に真剣さがまさった。

長かったようで、短い実習も終わってしまった。私は毎回心の中で実は私の担当だった御遺体と対話を常にしていた。実際その方は男性であったけれども母を亡くした私は親のようにそしてもちろん、教師の様に向き合ったと思っている。実習で人体の構造について感動したことを伝えたり、教えを乞い、そして従った。時には反発したこともあるかもしれない。そういった対話のくりかえしが終わり、考える。私は、この実習を通して成長をしただろうか。最後に御遺体にうかがった……。「はい、良い医師になるよう、努力いたします。」最後に御遺体は、私に再び決心させ、やる気を思い起こさせ、励ましてくれたようだ。

 

献体をしてくれる多くの方、そしてそのご家族の多大なるご厚意によって実習が執り行えることを忘れず、これからも努力していこうと誓う。本当にありがとうございました。

 

解剖学実習を終えて

 

鎌田 ことえ

 

私にとっての解剖実習とは、人体の驚異に対する率直な驚きと感動の連続であった。緊張や不安の交錯する中で迎えた御遺体への対面の日、私は穏やかなお顔で眠っていらっしゃるおじい様のお顔を拝見しながら、自分が医師を志していることを改めて感じた。そして、この方のご好意を無にしないようしっか

 

 

 

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