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語りかけてくれているような気がしました。自らの身をもって、私たちに人体の不思議さ、生命の尊さを教えてくれたのです。献体して下さった方々とは、ちょっとかわった出会い方をしてしまいましたが、私はこの出会いを一生忘れることはないと思います。″本当にありがとうございました″と改めてお礼を言いたいと思います。

 

解剖学実習と献体について

 

真壁 秀幸

 

医学生にとって解剖学、とりわけ解剖学実習は、人体の正常な仕組みを理解する為に重要な意義を持つもので、今日の医学を学ぶ我々には必須科目である。私は医学部入学以前より、検察医でもある父の死体検案に立ち合うことがしばしばあった為、死体を直に見たのは解剖学実習が初めてではなかった。検察医は解剖することはないので、破損した遺体は何度か見たものの、体の内部を正式に見たことがなく、実習前から大変興味のあるものであった。そうして実習に臨んだ私は、解剖が進むにつれて明らかになってゆく人体の神秘に心打たれた。実習書や専門書を見ながら人体を観察すること約半年、多少の異常や破格があったり、個体差はあるものの、大まかな構造はほぼ変わらず、実に巧妙に、複雑に出来ている人体はまさに神の芸術品とまでいえるような気がした。解剖学実習は、教養部から学部へと進んだ我々にとって、物事の

 

 

 

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