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展示

芸術とヘルスケア会識

 

■メモリアル・キルト・ジャパン

 

AIDSメモリアルキルトは、HIV感染症/AIDSに倒れていった人達へ向けて作られた目に見え心に感じる愛情のシンボルです。

一枚のキルトは3フィート×6フィート(約90cm×180cm)、人がひとり横たわれる大ききの布で、その人の名前が記されていたり、愛用していた衣服や小物類、周りにいた人達からのメッセージが縫い付けられていたり、私達がそれぞれの人生を生きているように一つ一つ皆違います。ここにはHIV感染症/AIDSによる影響が統計上の数字だけでは表せないんだという強い意志が表現されています。これらのキルトは家族や友人、その人を愛していた人や影響を受けた人などによって作られ、その時間は人の心を癒し前に進み出そうとする力を生み出してくれます。AIDSメモリアルキルトは、HIVと共に暮らし、笑い、悩み、愛した人達の存在を伝える命の記録です。そして、自分達が受けた悲しみや苦しみを繰り返さないようにとの深い願いが込められています。

 

■のひな利子

 

ヌード彫刻と都市

見上げると奇妙な姿のポーズで、立っているヌード彫刻がありました。男性の手の平で両手をひろげ肩足をあげて飛び立とうとしているのに、それは無駄な抵抗のように見えて仕方がありませんでした。蹴り上がろうとした瞬間、男性の手によってすぐに捕まえられる予感がしました。

自由になれずにもがき苦しんでいる自分を見た思いでした。離婚の成立がしていない不安定な状態で、人生とは?男とは?女とは?などの疑問や不安がいっぱいで、オドオドと幕らしている時期でした。そんな時、このヌード彫刻をみて、女性がひとりの人間として生きてゆく時、生きづらい環境がここにもあると思えてなりませんでした。

家庭で悩んだことが都市の彫刻にも会社の有り様として浮かんで来た時、この彫刻から出発して写真を始めようと思いました。

都市の中にはたくさんのヌード彫刻があります。若い女、貞淑な妻、完璧な母、怠惰な主婦、意思のない若い女性的な役割を押し付けているようなものが多いような気がします。

仕事をする私、ものを考える私、スポーツをする私。いろんな「私」があるのにひとくくりされてしまう。結婚するとだれだれの奥さんを呼ばれます。スーパーに行くとお母さんと呼ばれます。私をひとつの名前でしばりつけないで。私は自由な意思で飛びたいのです。

今、私は自分自身に向き合うために写真を撮っています。何度も挫折を繰り返しそれでもどうにかここまで来られたのは、写真を始めてから、関わった人々が私を励ましてくれたことです。写真との出会いが人生の転機でありこれからも支えになることでしょう。

 

 

 

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