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■ 合同討議 ■

 

施設ケアと在宅ケアの連携

 

 

司会

紀伊國献三 東京女子医科大学教授

 

パネリスト

ヴァージニア W.バレットコロンビア大学看護学部講師・コロンビア大学
QOL研究所所長
シャスティン・ルンドストロョーム  医療コンサルティング会社“オクトパス”代表
クリストファー・パウロスイラワラ地域健康サービスセンター地域部長
ニューサウスウェールズ大学医学部講師
稲庭千弥子医療法人久幸会理事長・今村病院院長
千葉 潜医療法人青仁会理事長・青南病院院長
山中朋子青森県黒石保健所所長

 

 

【紀伊國(司会)】 午前中のシンポジウムでは、国によって多少の差はあっても、痴呆を取り巻く問題には、さまざまな試みを行う必要性があることを確認できました。さてそこで、青森県はどうような状況にあるのか、地域性を踏まえた発表をお聞きしたいと思います。

最初は、地元八戸の青南病院の院長である千葉潜先生。千葉先生は、老人保健施設や訪問看護ステーションも運営されています。

【千葉】 私は、精神科専門病院である青南病院と、主に痴呆を対象とした老人保健施設・南山苑、また訪問看護ステーション・五福を設置、運営しております。現在は、在宅介護支援センターと痴呆の方のためのグループホームを準備しているところです。

さて、南山苑は痴呆高齢者の方々のケアを中心とした施設ですから、「お父さん、南山苑へ行きませんか」などと、家族が簡単に勧めるようなことはありません。青森は、必要以上に親類縁者や近所の目を気にしなければならない土地柄で、加えて、福祉日本一の県を目指すといいながら、在宅ケアばかりを美化・推奨する地域に居住している者としては、施設ケアで介護を受けるということは罪悪感さえ感じてしまうものなのです。ましてや、「家族がぼけた」などと、口が裂けてもいうことはできません。

そのため、南山苑に入所相談に訪れる多くの家族は、皆さん一様に疲れ切り、心身ともにぼろぼろの状態です。肉親に起こった痴呆という事態に対する否定や怒り、絶望などの経過をたどって、やっと施設ケアの門をくぐる決意をするのです。

ある調査報告によれば、肉親の痴呆をケアしたことのある人の3分の1が、痴呆になった肉親に対して「激しい憎悪、怒り、憎しみをもった」と答えています。このように、在宅で家族が必死にケアを続けている間に、どうしようもない感情の溝ができてしまうと、在宅ケア自体が非常に困難なものになってしまいます。介護する人と痴呆高齢者との生活経験が長い場合はまだよいのですが、介護者が孫の嫁などの場合、痴呆高齢者と家族を取

 

 

 

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