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オーストラリアにおける高齢者ケア政策

 

オーストラリアにおける施設ケア

オーストラリアの高齢者に対する長期ケアは、施設ケアと地域ケアの組合せにより行われています。施設ケアのシステムは2つのレベルで構成され、それは、依存度の高い高齢者のための老人ホームと、依存度の低い高齢者向けのホステルです。痴呆患者は施設および地域の両方でケアを受けることになりますが、その数はほぼ同数です。オーストラリアの老人ホーム入所者の痴呆症有病率は高く、認知障害はその約90%に認められています。しかし、老人ホームの痴呆患者の大半は普通の施設でケアを受けており、痴呆症のための特別な施設でケアを受けている人は8%にしかすぎません。ホステルでは、入所者の約50%が何らかの認知障害をもっており、老人ホームの場合と同様に、大半は普通の施設でケアを受けています。

この15年間、オーストラリアの高齢者ケア対策は変更され、その結果、施設ケアから地域ケアへとそのバランスは移行しました。この変更は、老人ホームにおけるケアの高コストと、ほとんどの人々が自宅にいることを望む、との基本的な考え方に触発されて行われたものです。この10年間に高齢者に対する老人ホームのベッド数の比率は連続して少なくなってきています。1985年には、70歳以上の高齢者1,000人に対し66.5のベッド数がありました。この数が、1996年には49.5となり、現在の目標は40です。

高齢者のための医療および福祉サービスの組織と提供には深刻な弱点があると結論づけた1982年の政府報告に続いて、改革プロセスが開始されました。報告書は特に、地域サービスが、ニーズに対応する能力をもっていないこと、またサービスに対する適切な評価ができないことが不適切なサービスの提供につながっていること、地域ケアが不十分であること、適切な施設収容が行われていないことをあげています。

 

家庭および地域ケアプログラム(HACC)

1985年に、在宅および地域ケアプログラム(HACCとして知られる)が設立されました。このプログラムのもとで、家電サービス、個人的ケア、自宅における準医療サービス、苦痛緩和ケア(センターと自宅で行うものの両方)、自宅への給食サービス、地域輸送サービス、家の改造や買い物サービスなどの幅広い地域ケアサービスが提供されています。HACCプログラムの目的は、高齢者および障害者の自立、安全、および生活の質を高め、費用効果のある地域ケアを代替的に提供することにより、施設への不適切な長期入所を減らすことにあります。

 

高齢者ケアアセスメント・チーム(ACAT)

1986年、政府は老人ホームおよびホステルに対する検討を発表しました。それによると、ニーズに適したサービスを提供することにより、施設ケアよりむしろ自宅でケアを受けさせることが再度勧告されています。勧告には3つの主要要素があります。第1は、老人ホームおよびホステルのベッド数を、ニーズに基づいて計画すること、第2は、施設ケアへの適性を判断するための高齢者ケアアセスメント・チーム(またはACAT)の開発、

 

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オーストラリアにおける各種施設

 

 

 

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