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ごあいさつ

 

 

日本財団 常務理事

西 澤 辰 夫

 

本日は、高齢者ケア国際シンポジウムにご参加いただき、ありがとうございます。

日本財団と笹川医学医療研究財団が、手を携えて開催してまいりましたこのシンポジウムも、本年で8年目を迎えることとなりました。当地で、このように盛大に開催できましたのは、青森県当局をはじめ、地元の皆様方のご支援の賜物であり、ここに厚く御礼申し上げます。

さて、21世紀は、高齢者の世紀ともいわれています。高齢化は、欧米諸国はもとより、アジア諸国においてもますます進んでおり、とりわけわが国における高齢化の伸び率は、際立ったスピードを示しております。また、ご承知のとおり、この高齢社会あるいは超高齢社会には、求められる課題が山積しております。

私たちは、この一連の国際シンポジウムで、高齢者ケアにおける諸問題を取り上げてまいりましたが、本年は、「痴呆高齢者のケア: 施設ケアと在宅ケアの連携」をテーマといたしました。

痴呆高齢者は、数十年後には100万人を超えるといわれています。この重要、かつ深刻な問題に、私たちは真剣に取り組み、いま、痴呆高齢者はどのように扱われているのか、また介護をしている方々はどのような困難に直面しているのかを認識することが重要であると思います。

そして、痴呆の問題は、私たち自身の現実的な問題でもあることを考えなければなりません。自分の家族が痴呆になれば、他人事ではなくなるのです。また、私たち自身も着実に歳を重ねて、痴呆になる可能性があることも現実なのです。さらに、この長寿社会では、90歳の痴呆の方を70歳の方が介護するという現実があるのです。

このようななかで、施設ケア、在宅ケアのいずれにしても、個人では対応し切れないという状況が生じております。これからは、地域社会の特性、実情を踏まえたケアへの取り組みがますます求められ、地域社会を構成する人々すべてが、この問題に取り組んでいかなければならないと思います。

青森には、「ねぶた」という有名なお祭りがありますが、八戸には「三社大祭」とよばれる地域ぐるみのお祭りがあります。この祭では、地域でつくった大きな山車の上に子どもたちが上がって、威勢よく行進するのですが、それは、まるで孫悟空やかぐや姫が地域ごとのまとまりを競い合っているように私には感じられます。高齢者問題に対しても、このような地域のあり方が必要なのではないでしょうか。

いま日本財団では、八戸市内の老人ホームの建設に協力させていただいております。昨年は、介護時間預託制度に取り組む八戸介護福祉会の活動に、また、八戸地域社会研究会によるデンマークの高齢者支援活動の研究会などに支援をさせていただきました。そのようなことから、日本財団としても、八戸の活発な福祉活動に関心をもち、その発展に大きな期待を抱いております。

さて、本日のシンポジウムには、アメリカからヴァージニア・バレット先生、スウェーデンからシャスティン・ルンドストロョーム先生、オーストラリアからクリストファー・パウロス先生にご出席いただき、また国内からは、基調講演をお願いしている日野原重明先生、そして稲庭千弥子先生、千葉潜先生、山中朋子先生にご参加いただいております。

この国際シンポジウムでは、高齢者問題について、これまでも各国ともにそれぞれの問題を抱え、また取り組んでいることを学んできました。このシンポジウムは、単に話を聞く会ではなく、ともに考える会であるという趣旨をご理解いただきたいと思います。

そして、高齢者ケアの最前線におられる先生方からは問題を披瀝していただき、会場の皆様とともに考える場となるよう、シンポジウムの意義をより高めていただくことを期待して、主催者の挨拶とさせていただきます。

 

 

 

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