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コンサートA ロンドン・シンフォニエッタ コンサート

曲目解説

 

■プリベアド ピアノのためのソナタと間奏曲(1946〜8)

ジョン・ケージ

 

この曲はケージのブリベアド・ピアノのための主要作品で、彼の最も有名な作品の一つであり、たびたび演奏され、録音も数多くなされている。この曲はインド音楽の美学を背景としており、特に8つの普遍的な感情-勇敢、官能、驚愕、陽気、悲哀、恐怖、憤り、憎悪-とこれら8つの感情がいつも向かっていく9番目の「平静」について音楽で表現しようとしたものだと作曲者は語っている。

16のソナタと4つの間奏曲の合計20の小品から成り、その中で4つのソナタを一組としたものが4組あり、そのあいだに間奏曲が置かれている。また全体は均等に二分されていて、前半と後半ではソナタと間奏曲の配置が対称になっている。

同時に、はっきりとしたいくつかの部分によるリズムの反復的構成を持つものと、まったく決まった構成を持たないものがたくみに配置されている。全曲の演奏には1時間以上を必要とし、今日は、4つのソナタ(I、V、XII、XIV)が演奏される。この曲のためのピアノのブリベアドはかなり手が込んでおり、準備には2、3時間かかる。ブリベアド・ピアノとは、果物を挟み込むなど手を加えて、音質や音高を変化させたピアノのこと。ジョン・ケージの考案で始まった。

 

ソナタ ?T〜?W   2部形式

間奏曲1       通作

ソナタ V〜?[    2部形式

間奏曲2       通作

 

間奏曲3       4部形式:AABBCCDD

ソナタ IX〜XI   3部形式:ABBCC,AABBC,AABCC

ソナタ XII      2部形式

間奏曲4       4部形式:AABBCCDD

ソナタ XIII〜XVI  2部形式

 

■セクエンツァX(1984)

ルチアーノ・べリオ

 

この作品では、ピアニストはふたを開けたグラントピアノの前に座り、音を出さないで、しかも少しずつゆっくりと音を変えながら鍵盤を押さえていく。その時トランペット奏者がピアノ内部に向かつて演表する特定の音に合わせてピアノが共鳴し、それがハ一モニーの土台となる。つまりピアノはトランペットが出す音に反応する共鳴箱の役割を担っている。

ベリオはこのセクエンツァ・シリーズでいろいろな楽器のための超絶的な新しいテクニツクと音響を模索し続けた。この『セクエンツァX』では、限られたアーティキュレーションとピッチから出発し、次第に両方の要素とも幅を広げ、ついにはトランペットという楽器の表現の可能性の限界にまで達していく。またシャズの影響として、柔らかいダブル・タンキング、グリッサンド、トレモロ、ヴァルヴ・トリル、ハンド・ミュート、そしてアタックだけを用いた音などが使われている。

 

■アンリズ カインド オブ ブルー(1997)

フレイザー・トレイナー

 

この曲はアンリ・マティスの「Blue Nude 1952」を基にした9分間のエレジーである。ゆるやかで、瞑想的で、夢のようなこの曲では、感情を抑えた叙情的なチェロの旋律と、大胆な“青”を表わすピアノとベルの伴奏が対照をなしている。

マティスの描くヌードの限りない曲線は、チェロの半音階的な音の輪郭にはっきりと反映されており、またこのチェロの音の動きは、曲のあいだ中、闇から光へと変形されていく。

 

■キング オブ デンマーク(1964)

モートン・フェルドマン

 

ソロ打楽器奏者のためのこの小品は、図形楽譜を使って静止感や平穏さを効果的に表現することに成功した、雰囲気に富んた作品である。

一定の打楽器が使われるが、そこでは個々の音が“個々の音の世界の中でそれぞれに生を営み続ける(フェルドマン『Durations』)”のである。

音は高、中、低音域が図形で表わされ、それらは連続した四角形の中に書かれている。各四角形はMM=66〜92の時価を持つ。演奏者は指や手、または腕のどこを使って演奏してよいが、スティックやマレットは用いられない。

 

 

■ロンドン・シンフォニエッタ プロフィール

ロンドン・シンフォニエッタは1968年にD・アサートンとN・スノーマンによって設立され、その後M・ヴァイナー、P・クロスリーが芸術監督をつとめ、94年からはM・シュテンツを首席指揮者に迎えている。

斬新で意欲的な手法で新しい音楽体験を提供することを目的とし、その創作活動や現代音楽に対する理解において、英国で最も優れた業績を持つことで知られている。国内外からの委嘱作品をはじめとする多彩なレパートリーを持ち、その中には233曲の世界初演曲、ベ

リオ、グレツキ、ブーレーズらの現代を代表する作曲家作品の演奏、各国の音楽祭での演奏、100回以上のレコーディングが含まれ、また多数の賞を受けている。彼らが演奏したCD「グレツキ・交響曲第3番」は世界中で発売されミリオンセラーとなる。

また、若手音楽家の育成や現代音楽の普及活動にも力を入れており、児童、教師、若者、高齢者、障害者から刑務所の受刑者まで幅広い層を対象に、作曲家、演奏家が参加する革新的で創造的な教育プログラムを実施している。

 

 

 

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