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米国にみる油汚染事故のための準備と対応

日本ウミスズメ類研究会 ジョン・フリーズ

 

米国における油汚染緊急時計画

 

は じ め に

1967年3月18日、英国でタンカー、トレーキャニオン号から3千7百万ガロンの重油が流出した。これを機に、アメリカ合衆国政府は米国内で起こりうる油流出事故に対応するため対策の調整に乗り出し、1968年、最初の国家緊急時計画(National Contingency Plan)を作成した。

 

現在、民間レベルも含め各行政府レベルにおいて緊急時計画を作成することが義務づけられている。連邦政府緊急時計画は、国家、地域、地区各レベルごとに作成され、その3つのプランがお互いに相反することなく協調していなくてはならない。国家緊急時計画は大枠示し、地区緊急時計画は関連する政府機関や州政府機関からの情報アドバイスといった地域的な指導と国家緊急時計画にある方針に基づき作成される。地区緊急時計画は地区委員会と連邦現地調整担当者によって作成され、計画には地域委員会と連邦現地調整担当者の責任をアウトライン化している。殆どの州でも独自の緊急時計画を作成しているが、各州の計画システムもまたそれぞれが州全体、地域、地区と区別されることがある。加えて、対合、沿岸・沖合いの設備についても緊急時計画の作成が義務付けられている。以上すべての計画は国家緊急時計画により調整と統一がなされている。

 

緊急時計画の構造

これらの緊急時計画に述べられている重要共通点は、1)油流出時のシナリオ、2)バックグラウンドインフォメーション、3)対策活動の3点である。

 

油流出のシナリオ

事故のシナリオは、事故の起きた場所、時期、天候、油の種類、流出量といったいろいろな要素によって千差万別であるが、シナリオによって油回収作業をするためのスタッフの対応能力も左右される。そのようないろいろな要素によって起きうるあらゆる事故を想定し、どのようなシナリオにも対応できるよう、また最悪の事態にも対処可能なように緊急時計画は作成されなければならない。

 

バックグラウンドインフォメーション

この項では、通信連絡方法や物資在庫管理、事故発生時の油回収方法などの技術的なインフォメーションについて述べられている。

 

対策活動

この項には、事故発生時にとられるべき必要な対策について述べられている。作成された緊急時計画には、どのように他の計画と協調しているかが記述されていなければならず、油除去に携わる全ての団体を調整し、責任の所在を明確にしなければならない。実際に事故が発生した場合に、効率的かつ統一された対応を行い、また、同時に様々な計画を円滑に機能させるためには、数種類の計画を同時遂行して行う共同模擬訓練や定期訓練が不可欠である。

 

油流出事故対策準備と組織構成

 

国家対策体制(National Response System, NRS)

 

国家対策チーム(National Response Team,NRT)

連邦政府機関の代表からなるこのチームは、事故に直接対応することは無いが、技術的アドバイスを常時提供することと地域で対応しきれない場合に調整補助を行う。

 

 

 

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