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開催に寄せて

パシフィック・シーバード・グループ(Pacific seabird Group,PSG)

会長 S.キム・ネルソン

 

パシフィック・シーバード・グループ(Pacific Seabird Group,以下PSG)より、この画期的なシンポジウムにようこそ。PSGは、アメリカ合衆国を本拠地とし、太平洋における海鳥に関する知識の向上と研究、保護を目的とした科学的な国際組織で1972年に設立されました。PSGのメンバーは、太平洋における海鳥の教育・研究活動に従事する科学者、海鳥と海洋環境を担当する政府関係者、海洋自然保護に関心をもつ個々など多岐にわたります。アメリカ合衆回、カナダ、メキシコといつた太平洋北東部の沿岸諸国におけるメンバーが大部分ですが、最近は、日本、ロシア、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ペルー、エクアドル、またヨーロッパやアフリカ諸国にも多くのメンバーを有するようになりました。PSGは、北太平洋における海鳥の保護と研究に加え、海鳥センサス(個体数推定調査)や他の調査方法の開発、年大会やシンポジウム、様々な教育的題材を通して一般市民の海鳥保護の理解を深めるなど、数々の先導的な役割を果たしています。PSGの大会には、1970年代に、小城春雄教授や他の日本の生物学者数名が出席、1993年以降は、現在もPSGの活動に深く携わっている小野宏治氏や綿貫豊氏を筆頭とした、より多くの日本の生物学者の参加が続いています。またPSGは、今回のシンポジウムのスポンサーでもある日本海鳥保護委員会を1995年に設立、日本における海鳥保護に重点をおいた活動も行っています。現在の委員会代表者は、ジョン・フリーズ氏と小野宏治氏です。

北太平洋における海鳥にとって、その生死を脅かす最も重要な問題の一つは油汚染であるというのがPSGの考えです。アラスカでのエクソンバルディズ号事故や日本でのナホトカ号事故など、油流出事故の多くは何万羽という多数の海鳥を死に追いやり、貴重な野生生物生息地にダメージを与えました。沿岸城を航路とする石油輸送が、いつ起こりうるかもしれない油流出事故という危機を生み出し、野生生物とその生息地を沿岸地区広域にわたり絶えず脅かしているのが現状です。PSGでは、本国における石油タンカーの建造基準の設定(二重船体の施工)、タンカーの輸送ルート、油流出事故対策と自然資源に与えた被害規模の推定、汚染された海鳥の救護と個体群と生息・繁殖地の現状回復といった点についての改善を推し進めて参りました。このような努力なくしては、海鳥個体群に与えるインパクトの把握や軽減はおそらくなし得ないでしょう。海鳥に限らずすべての沿岸・海洋環境の自然を保持し、油汚染と他の要因により生じた環境破壊によるインパクトを長期的に理解するためには、海鳥個体群の現状把握、研究、保護、管理を長期的に継続していくことが必要不可欠であるとPSGは考えます。このような努力をもってすれば、将来的に海鳥が生き延び、その本来の姿をとりもどせるチャンスがより多くうまれるのです。

今回、この特別シンポジウムを開催し、日本における野生生物保護と油汚染事故対策の改善をすすめる皆様方の熱意と努力にPSCは心から賞賛の拍手を送りたいと思います。PSGは、日本を含む北太平洋各地域において海鳥保護問題に情熱をかたむける人々と科学者や政府間の橋渡しをしながら、これからも可能な限り支援を続けていきたいと思っております。来年1月21日から25日にはPSGの第25回年大会が開催されます。今大会では、「変わりゆく海洋における海鳥―海鳥に関する科学の進歩」をテーマとしたシンポジウムの開催も予定しております。カリフォルニアでも有数の美しい自然を誇るモントレーで開催されるこのエキサイティングな大会に是非皆様方がご参加されることをお待ちしております。詳しくは、ジヨン・フリーズ氏または小野宏治氏までお問い合わせ下さい。

 

 

 

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