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割愛していたが、本年度は政情不安とのことで、ケラ・セルジャン村の検診を中止し、ウワンゴ地区の検診を主に実施することにしたので、ビルハルツ住血吸虫が存在する地区であることから遠心沈澱法による尿検査を行った。尿の提出者は252名でその中10名(4.0%)からビルハルツ住血吸虫の虫卵が証明された。一昨年に実施した中間宿主貝の調査ではこの地区からPila属の貝が採取されただけで、ビルハルツ住血吸虫の中間宿主貝は検出されておらないが、一昨年度の報告書にも記したごとく、10月の雨期の終わり頃にはビルハルツ住血吸虫の中間宿主となる」Bulinus属の貝がみられるとのことであるので、ウバンギ河の支流での水浴などにより感染するものと判断される。ビルハルツ住血吸虫症患者に対してはプラジカンテルを投与したが、診療所の職員を集めて更めて住血吸虫の感染経路の説明など、その予防対策としての衛生教育の重要性を指摘して一般住民の啓蒙を計るように依頼した。

 

C) 皮膚生検によるオンコセルカ検査成績

 

皮膚生検はバイキ地区のバンザ村でのみ実施した。その結果は表3に示すごとく生検標本では受診者全員の33名がオンコセルカミク口フィラリア陰性であった。この生検標本は乾燥させて日本に持ち帰り、現在染色して検査中である。

 

D) 血液検査成績

 

血液検査はバイキ地区のバンザ村の住民40名についてのみ実施した。現地で採血して風乾後日本に持ち帰り、濃塗標本は溶血後、薄層塗抹標本はそのままメタノール固定、ギムザ染色を行って、濃塗標本では血中ミクロフィラリアを、薄層塗抹標本は血中ミクロフィラリアとマラリア原虫の検索を現在実施中である。

 

6) 考察

 

本年度は一昨年の5月から昨年の10月まで中央アフリカで暴動が起こり、現在、現地の情勢は一応落ち着いているものの地方には反政府の反乱軍やゲリラが出没するとのことで、ブアール地区のケラ・セルジャン村の検診治療を中止し、首都バンギー近郊のウワンゴでの検診を主体に行った。その他の地区としてはバンギーから110kmと日帰りが可能となバイキ地区バンザ村の検診も一日行った。このバンザ村行きには大使館のアドバイスにより憲兵が一人護衛として同行したが途中何事もなく、むしろ現地の人たちが私どもの検診をずっと待っていたとのことで、憲兵も初めての経験だと非常に驚き、また同行した日本大使館の斉藤医務官も初めて現地の人たちと直接接触して診察が出来たと喜んで下さった。バンザ村にも健康手帳を交付しているが、村民は健康手帳を大切に保管して有効に使用しており、斉藤医務官も非常に興味を示しておられた。またウワンゴ診療所やバンザ村で現地協力をしてくれた医師、看護夫、技術者も我々の過去の検診に従事した経験のある人たちで、検診遂行には全く支障が無かった。

本年度の調査は大使館と連絡の上、当初平成10年3月8日から3月17日までの10日間現地で

 

 

 

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