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いずれにせよ、地方制度のアングロサクソン化は、ポスト共産主義空間に集権体制を生む方向で作用している。そもそも、アングロサクソン型の地方制度がより「進歩的」でありえたのは、19世紀的な国家・自治体間分業の所産にすぎない。というのは、19世紀においては教育・福祉にナショナル・ミニマムを設定すべきであるという意識が希薄であったため、それらの領域は地方自治体の独壇場となりえたからである。こんにちにおいては状況は変わり、一方では国家が社会政策に責任を負うことでナショナル・ミニマムを維持し、他方では、国家が自治体に社会政策の実行を委任することで住民のニーズに効率的に応えなければならない。この状況下で国家と自治体をいわば縦割りするアングロサクソン型の地方制度を導入すれば、自治体には(水道ガス、域内交通など)国家監督を必要としないミゼラブルな権能しか残らないだろう。過去数年間のロシアにおける地方制度のアングロサクソン化がもたらした諸帰結はこの見解を裏付けているし、日本において差し迫っている機関委任の廃止についても、これによって自治体の国に対する交渉能力がかえって下がるという見方も成り立つのである。現代的行政システ

 

 

 

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