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き、法律は州議会がこれを公布する、行政長官(知事)によって拒否された法律が再度採択された場合、行政長官(知事)は7日以内に法律を公布しなければならない、とじていることなどである。

憲法裁判所は、問題となっているのは、ロシア憲法に対してではなく州の法令に対する憲章の最高法規性であって、憲章のこの規定は、ロシア憲法に対しても連邦の法令にたいしてもその最高法規性を主張するものではないと判断した。これは、他の構成主体の憲法・憲章の多くに同様の規定がみられることを念頭におくとき、新しい限定的解釈の視点を与えたものということもできよう(7)。

権力分立原理にかかわる点が主要な論点である。憲法裁判所の判決の論旨は以下のとおりである。州の憲章によれば、行政長官(知事)は、州議会の採択した法律を拒否し、再審議を求める権利(停止的拒否権)を有し、その際、法律の再審議は、拒否の解除と同様、その法律の採択にとつては義務的となる。行政長官(知事)を長とする執行権力は、法律の採択と公布の段階で立法過程に影響を及ぼす機会をもっており、このことは、憲法の定める権力分立と権力体系の統一という原則に合致している。法律の審議、承認、拒否、再審議の提起および公布に関する権限を行政長官(知事)がもつことは、法律の公布が行政長官(知事)の証明を前提とするということを意味しているはずであるが、憲章は、州議会が採択した法律は議会の議長のみが署名すると定めており、実際上は行政長官(知事)による法律の署名の必要性を排除するものとなっており、国家権力の統一という原則を内容とするロシア憲法に適合していない。さらに、憲章は、州議会が執行権力機関の形成に参加する権利を定め、州議会が、行政長官(知事)の提案により、行政副長官(副知事)および州行政庁の諸機関の長を州法にしたがって任免の承認を行なうものと定めている。州議会の同意による解任は、事実上、州行政庁が権力分立の条件のもとで独立した執行機関として活動する可能性を奪うことになる。また、州行政庁の権限に属する問題について州議会への報告義務を定めていることも、州の法律によってコントロールの形態や方法の決定をも含む議会の権限を無制限に拡大することができることになるため、行政庁を独立した国家権力の執行機関から議会の機関への事実上の転換の可能性を生みだしている。これは、憲法10条に定める立法機関と執行機関の権力分立原則および独立原則と両立しない。

チタ州憲章は、州議会が州行政庁と共同して州裁判所所長および州仲裁裁判所所長の任命を取り決めるとしているが、これは、州裁判所の裁判官は連邦法に定める手続により任命されるとするロシア憲法に適合していない。そして、州議会が州行政庁と共同して連邦執行機関の出先機関(地域支部)の長を任命し解任するとする規定もまた、このレベルの公務員は連邦の執行機関が任命するとするロシ

 

 

 

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