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地域であって、自治管区の「自立化」傾向の強まりは州の存在意義そのものに決定的ともいえる意味をもっている。憲法裁判所の解釈は、形式上妥当なものであるが、自治管区という連邦構成主体の存在とそのあり方について問題が依然として残っていることは否定できないところであろう。

? これらふたつの決定に関連して、93年憲法制定以前であるが、自治管区の連邦への直接参加の事例を認めた憲法裁判所の判決も紹介しておく意味があろう。従来はマガダン州に帰属していたチエコチ自治管区が、92年6月に連邦の法律にしたがい、ロシア連邦に直接に参加することになったことにつき、マガダン州議会がその違憲性について争った事件である(『憲法裁通報』94-2・3)。

自治管区は、90年のロシア共和国憲法の改正により、連邦を構成し、地方(クライ)または州に帰属することができるとされ、92年には、地方(クライ)や州に属するかいなかにかかわらず、ロシア連邦の構成主体であるとの憲法上の位置づけをうることとなった。それ以前には、自治管区は必ず地方(クライ)または州に帰属しなければならないものとされていたのである。92年3月の連邦条約も、他の構成主体との協定の自治管区を独立した参加者であるとしている。こうした経緯のなか、チュコチはロシア連邦の独立した構成主体となることを決め、ロシア連邦最高会議が特別法によりこれを認めたのである。憲法裁判所は、自治管区の地方または州への編入およびそれらからの脱退は住民の過半数の同意が必要だとする訴えについて、この問題は連邦からの分離(離脱)または連邦への統合(参加)とは別の事柄であり、住民投票によらなかった点についても、それが自治管区ソビエトの決定の法的効力を奪うものではないとして、この一連の過程が憲法に適合的であったと判断した。

 

(2) 構成主体の憲法・憲章および選挙法に関する事例

 

? ここではまず、構成主体における権力分立原則にかかわる事例を紹介することにしよう。チタ州憲章-基本法の一連の規定の合憲性審査事件判決(1996.2.1)である(『憲法裁』96-1)。

事件は、チタ州行政庁が、憲章が、州の国家権力機関の形成手続および権限は、権力分立原則および権限区分や構成主体の国家権力機関の組織および活動の手続に関する国家権力機関の独立性(自主性)を含む憲法体制の原則に違反すると訴えたことによるものであった。争われたのは、憲章10条が、この法令が州の法令に関して最高の法的効力を有すると定めていること、さらには、州の制定法について州議会議長が署名する、行政長官(知事)は所定の手続で州議会が制定した法律を公布する、行政長官(知事)が所定の期間内に法律を公布せず、拒否もしないと

 

 

 

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