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2 調査研究の意義

 

このような地方制度ないし地方自治の比較研究は、およそ次の二つの意義があると考えられる。

第1に、純粋に学術的な意義である。とくに実践的な狙いはもたずに、それらの国々の社会や政治経済の実態を究明することをめざすものであり、さらにいえば、さまざまな社会の構造やメカニズムを明らかにすることによって、社会科学的な知見を獲得しようとする目的である。たとえば、現行の日本の地方自治の分析と地方制度史の研究に資する可能性は大きいと思われる。

第2の意義は、前述したように、制度改革の問題を考察する上で有益な示唆を得ることである。ある改革を実施する上で発生するさまざまな問題点や課題とはどのようなものであるかを、旧ソ連・東中欧諸国で行われている改革の中から抽出することが、最終的にはわが国が改革を行う場合に参考となる可能性があることである。

第3の意義は、国ないしは地方自治体の国際貢献の一環として、体制移行諸国に対する援助を行う場合の、相手国についての基礎的な情報の収集である。より広い意味で、社会を発展させ、国民福祉を実現させるためのノウハウの提供が考えられる。もとより、そのためには、体制移行諸国の土壌をよく分析して移植するシステムや制度との適合性を調べ、相手国の土壌に適したシステムや制度を教示すること、つまり、土壌にあったシステムの改良を行う上での基幹的資料となりうるだろう。

 

3 調査研究の対象国と調査研究方法

 

今年度は、昨年度に引き続きロシア連邦を対象国の一つとしたが、昨年度の連邦レベルの地方自治と地方制度史の調査研究に続き、今年度は、憲法裁判所判決に見る連邦とその構成主体をめぐる政府間関係や、連邦を構成する主体すなわちリージョンのうち、わが国と比較的交流も深い沿海地方の現状を扱った。また今年度の新たな対象国として、旧ソ連の崩壊とともに分離独立したウクライナと、中欧のハンガリーを取り上げている。ウクライナは、当初の計画では、調査対象国としていなかったが、より多くの国の地方制度に関する情報をもとにした比較研究を進めていくために、松里委員の協力を得て新たに追加したものである。

本調査研究は、別掲の学識者および行政の実務家を委員とする委員会での討議と、二週間弱の現地調査をもとに進めたものである。委員会では、それぞれの国ないしは地域の地方制度および地方自治の概要の報告を受け、その実態の把握および現地調査で確認しなければならない事項を討議し、その上で、海外調査を実施し、新たな情報の入手および不足を補う形式を採用している。また、地方制度の内容に密接

 

 

 

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