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すると、「『目に見えない橋』、とうたってあるから、目的を探すことも含めた意味にすればよいのでは?」と自然科学者から。考え方の一寸したそごに絶妙なブリッジが架けられ、メインテーマとなった「公」と「個」についても、幅広い角度からさまざまな意見が提言された。会議開催までに二回開かれた世話人会では、示唆に富む意見とともに、ユーモアあふれる会話となり、事務局にとっても刺激にみちたひとときだったと思う。

会議を成功させる要素のひとつに、会議場の選定と設営がある。一泊二日の会場をどこにするか。関西方面や関東、東北方面の参加者が、同じような条件で集まれる所。都心から二時間程度の交通の至便な場所。多忙な日常からしばし開放される非日常性があり、自然環境の良いところ、と条件をあげて結局、箱根に的が絞られた。そして六月のある一日、事務局四名で箱根の山をかけめぐり、ロケーション、サービス、会議室の設営条件等々の細かなチェックの結果、箱根山のホテルに落ち着いた。この時も、ホテルマンとの打合せ、会場のサイズから、参加者は三〇名程度となり、各界のオピニオンリーダーへの呼びかけが始まった。会議の目的はフィランソロピーの輪を広げ、社会セクターの活性化に寄与すること。このために、財団関係者やNPOのリーダーなど現場で実践的活動をされている方々も同じテーブルに座り、忌憚のない意見交換をしていただくことであった。現場感覚にあふれたNPOのリーダーと、官界、学界、産業界、言論界、文化関係のリーダーが一堂に会した泊まり込みの討論の場は、多分、今回が初めての試みではなかっただろうか。

会議当日、ダニエル・ベル博士と林雄二郎先生の問題提起をうけてはじまったセッションは、事務局の予想をうわまわる三五名の参加者を得て、実に活発な、中身の濃い討論となった。発言者は自分の名前を書いたプレートを立てて、議長に発言を知らせるが、どのセッションもプレートが林立する。会議スタート時に、加藤議長から、「発言は、前の発言者の内容にリンクした意見をしり取りゲーム方式で進行したい。枠をはめず、京都座会方式で」と提案があった。加藤議長の見事なしきりで、幅広い分野からの発言が拡散されず、大きな枠組みのなかで次のセッションへとリンクしていく。議長の力量のすばらしさを今回ほど感じたことはない。今回は予想以上に参加者が多く、しかも発言が引きも切らずで、直ぐに意見を言いたくても、順番がなかなかこない、という場面が多かった。全員参加で会議を進行をする場合、参加者数と発言時間をどうするか、次回の課題でもある。

振り返ればわずか二日の会議。しかし目に見えない橋を架ける作業は、目に見えない膨大なペーパーワークの集積でもある。この作業には柏田さんのすぐれた事務処理能力が大いに発揮されたと思う。ベル博士との連絡、世話人会の設営、案内状の作成から参加者一人一人を訪ねて趣旨説明する仕事まで、これは相澤さんの大いなる努力と仕事への真摯な打ち込みに負うところが多い。彼女の活躍には目をみはるものがあった。そして、事

 

 

 

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