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容がわかりやすいが、社会福祉協議会などといった、インターミディアリな仲介組織は何をしているところか抽象的でわかりにくい。たとえば私たちの組織の使命は″市民社会の形成″なのだが、写真も掲げにくいので資金が集まりにくい。だから日本の場合は大半の仲介組織は行政直営になる。完全な民間組織の存在はなかなか難しい。三番目はリーダーシップと公開性のバランス。実はNPOも一種のベンチャービジネスであって、組織の経営においては指導的な動きが必要だが、下手をするとワンマンになってしまう。いかに市民と対話しながら事業を経営していくかという透明性の確保が重要である」との意見が出、NPO活動を展開し成長していくにあたって、NPOであるがゆえに生み出される根本的な課題が広く示された。

二日間にわたって繰り広げられた討論内容を以上のとおり報告する。結果的には、収れんされた結論こそなかったが、未来を展望する示唆に富んだいろいろな形の意見・提言がきら星のようにちりばめられた、百花繚乱の魅力あふれる会議であった。

この二日にわたる討論を振り返っての基調講演者の意見を報告する。

ベル氏は「日本が今後直面していく問題として構造変化が生じてくると思う。この問題を解決していくには、日本の社会においてこれまでとは違った新たな柔軟性が求められる。日本社会が新たな柔軟性を持つためには、経済的な視点からも社会的な視点からも、既存のものに対する新しいニッチなものの成長、発展が望まれる。経済的視点においては新たなベンチャー資本の育成があるだろうし、社会的な視点からはまさしくNPOの成長というものが″ニッチ″として日本に柔軟性を持たせ、活性化させる大きな要素となってくるであろう。そしてこうした新しい要素を培って行くためには、教育改革をはじめとする、イニシアティブをとれる人間、企業家精神に富んだ人材の育成ということも大きな課題となってくると思う」と総括し、こうした課題を抱えながらも日本の将来には希望が持てるとのべた。

林氏は福沢諭吉の言葉を引用しながら「日本には個人が頭の中にもっている″私知″は十分にあるが、その一人一人が持っている私知を社会全般に広げて、社会全体の知恵である″公知″としていく手だてを欠いている。また、一人一人のもっている徳、例えばボランティアという徳を社会全体に広め″公徳″としていくことも必ずしも十分とはいえない。私は常日頃からフィランソロピーも公知の一つであると言っているが、公知と公徳というものを日本がどうやって造っていくか、これが今の我々の課題だと思う」と述べた。

二一世紀にむけて公知と公徳をいかに培い、新しい柔軟性をもった社会をつくっていくか――この課題を確認して、第一回目のForum Em. Bridge は締めくくられた。

[文責 Forum Em. Bridge'96 事務局]

 

 

 

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