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序章研究の範囲
第1節 研究目的と検討範囲
 
1. 研究目的
 
この研究は、ターミナル駅における高齢者・障害者の円滑なモビリティを確保するために、情報提供手法はどのようにあるべきかを探ることを目的としている。
ターミナル駅は今日では、駅一円に商業、業務、行政等の諸施設が集積し、また構内にも種々の施設が複合して、複雑さを増しているのが一般的である。
このようなターミナル駅では、高齢者・障害者ばかりでなく、外国人や鉄道利用に不慣れな人、他の地域からの来訪者などを含めて利用者一般においても、さまざまな移動制約に直面している。
高齢者・障害者の円滑なモビリティを確保するためには、共存する利用者として共通な施設を利用している利用者一般にある移動制約の要因を解明して、その対応の方向性を考察し、同時にそれぞれの障害者の移動制約を生むさまざまな情報コミュニケーション障害の要因を把握して、共通するハンディキャップを軽減・克服する解決策を探ることが必要である。
この研究では、高齢者・障害者を含めた利用者一般をできるだけ広く捉えることによって、より多くの人々が共通の施設を円滑に利用できるように図る視点を重要と考えている。
不特定多数の利用する公共施設における情報提供の主題は、これまで本格的な研究対象として注目されることが少なかった事実がある。
にもかかわらず今日の多くの都市施設では、複合化、大規模化が進み、多くの利用者にとって、その空間的な位置の中で情報を得ずに施設を利用することは、不可能な状況になっている。
情報が唯一、利用者と施設を結んでいる事例も少なくない。
この研究では、移動を中心としたターミナル駅利用行動の中で、利用者は基本的にどのような情報を必要とし、計画側は原則的にどのような対応を図る必要があるのか、その計画手法の基準を見い出すことを重要と考えている。
これらの考え方のもとに、この研究を進める。

 

2.検討範囲
 
ターミナル駅の原意は終着駅を指すが、わが国では一般に、複数の鉄道路線が結節する大規模駅をそのように呼称している。
ターミナル駅では鉄道が結節するほか、バスやタクシーなど地域的なアクセス交通を持ち、また複数の商業施設が複合しているのが一般的である。
この研究では、そのような大都市にみられる大規模複合駅を検討対象としている。
またこの研究では、ターミナル駅のラチ外コンコースを原則的な検討範囲とし、連続的な利用者の行動を考察するうえで必要がある場合は、考察対象をホームにまで拡げることとする。
なお文中ラチ外、ラチ内とあるのは、それぞれ改札口の外、内の意である。
サインというのは文字どおり「しるし」「符号」「合図」の意味で、伝達したい内容を記号として示すことであるから、一義的には情報そのものである。
広く考えれば目印となる建物や出口を示す光などもサインで、音のサイン、香りのサイン、触覚のサインなどもある。

 

 

 

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