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2)スポーツ事故の法的責任
スポーツ事故が発生した状況によっては、示談で収まらず法的な責任を求められることもある。法的責任には刑事責任(刑法、刑事訴訟法により微罪処分、過失犯、業務上過失犯等がある)、民事責任(民法、国家賠償法による損害賠償責任、過失相殺)、さらに公務員としての責任が問われる行政処分(地方〔国家〕公務員法、教育職員免許法による懲戒、分限、欠格)などがあるが、過失が中心のスポーツ事故では、刑事訴訟は少なく損害の賠償を求める民事訴訟がほとんどとなっている。
責任が問われる対象は、指導者(教師、監督、引率者、介護者)、管理者(校長、館長、会長)、使用者(国、都道府県、区市町村)に分かれ、それぞれの立場によって責任も異なってくる。
3)裁判判例
スポーツ事故は、たとえ大事故になった場合でもその多くは示談で済んでいたが、しかし一部は、裁判に持ち込まれている。1995年までに、我が国でのスポーツ事故による裁判は、刑事事件6件、民事損害賠償事件223件が争われ、うち、請求(一部を含む)が認められた判決は134件(60%)となっている。
また、施設の設置や管理の瑕疵(通常備えるぺき安全性を欠くこと)が問われた事件は78件あり、その請求が認められたのは37件、棄却されたのは41件と記録されている。
これまでの裁判のうち、安全管理に大きな教訓を残した判例を図表2に示した。
「ママさんバレーボール負傷事故」では、スポーツは違法性が阻却されることやみんなで危険を黙認してはならないことが指摘されている。また、「水泳教室主婦死亡事故」では社会人がスポーツに参加する際の健康上の自己責任について、「水泳教室での同伴幼児溺死事故」では幼児同伴でのスポーツ参加に対する警告、「トライアスロン競技者死亡事故」では危険性の高い種目での高齢者の参加資格の必要性、「子供会ハイキング中の溺死事故」ではボランティアの責任について、「地区体育祭での綱引き事故」では体育指導委員の責任などについて判断が示されている。今後の安全対策と責任を考える上での大きな示唆を与えてくれる。

 

 

 

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