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大腸がん検診における便潜血検査受診率および精検受診率の向上への取り組み

熊本県・特定医療法人 高野会高野病院 野崎良一・高木幸一・高野正博

要旨

我々は、平成5年度に熊本県下94市町村のうち67市町村、県外4町村と委託契約を結び、2日間連続採便による免疫便潜血検査2日法を用いて大腸がん検診を実施した。今回、便潜血検査受診率向上のため検体回収方法および採便キットの配布方法についての工夫と精検受診率向上の試みとして精検未受診者への勧奨を行った。便潜血検査受診率向上のためにわかったことは、?@採便キットは対象者全員に配布した方が受診率が高い、?A希望者のみに採便キットを配布する場含は、単独検診よりも複合検診の方が受診率が高い、?B対象者全員に採便キットを配布した場合は、各種検診の組み合わせによる差は少ない、であった。

精検受診率向上をめざして積極的な精検受診勧奨を行ったが、受診勧奨の第1段階である往復はがきの郵送前には受診率は60.9%に過ぎなかったが、電話による受診勧奨後は83.3%まで上昇した。以上から、我々の便潜血検査受診率および精検受診率の向上への取り組みは十分に効果があったものと考えられた。

I.緒言

平成4年度老人保健法(老健法)第3次計画の中で大腸がん検診が行政検診としてスタートした。その中で一次スクリーニングは免疫便潜血検査2日法を原則とし、受診率の目標値も設定されている。平成4年度6.2%、平成7年度16.4%、第3次計画の最終年度の平成11年度は30%となっており、行政の検診担当者は受診率向上のため種々の取り組みを実施している。さらに、便潜血検査陽性者に対する精検として、全大腸内視鏡検査もしくはS状結腸内視鏡検査と注腸X線検査併用を推奨している。精検における問題点として、精検方法別の診断精度、医療機関における精検処理能がクローズアッブされているが、検診担当者側からはこれらの問題以上に精検受診率向上への取り組み、特に精検未受診者に対する勧奨が大切と思われる。このように、大腸がん検診による大腸がん死亡率減少効果を高めるためには、一次スクリーニングとしての便潜血検査受診率の向上と精検受診率の向上が重要である。

当院では昭和58年度から免疫便潜血検査とS状結腸内祝鏡検査を組み合わせた大腸がん検診を全国に先駆けて実施してきた舳。平成5年度には熊本県下94市町村のうち67市町村、県外4町村と委託契約を結び、2日間違続採便による免疫便潜血検査2日法を用いて大腸がん検診を実施した。我々は、便潜血検査の受診率に大きな影響があると思われる検体回収の方法、採便キットの配布方法についての工夫と精検受診率向上の試みとして精検未受診者への勧奨を行ったので、それらの成果について平成5年度の検診成績をもとに検討した。

 

 

 

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