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関係あると仮定すると、この2つの測定値に何らかの相互関係がありうる。血圧は明らかに心拍出量に影響されるため、血液もまたCTRとR波高と関係がありうる。この関係の程度を調べるのは臨床上有用なことである。しかし、この問題についての知見は少なく、詳細は不明である。
本研究において、我々は血圧、CTRとR波の関係について医療機関を受診した患老ではなく、地域集団において調査を行った。R波の中では、V5波高が典型的に心室の電気的興奮を示すものとして電気的心肥大の判定に測定されている。このため、我々もRV5波高を測定した。年齢と肥満が測定値に影響を及ぼしうるため、我々はこれらの因子を補止した後の分析も行った。

II.対象および方法

A.対象集団

1981年から、高知県のへき地山村である大川村において18歳以上の住民を対象とした定期健康診断が行われている。1981年から1990年にかけて、延べ3,861人(男性1,814人、女性2,047人)の住民が健康診断に参加した。健康診断は毎年4月から11月の間に一名の医師が勤務する村内の無床診療所において、午前9時から正午の間に行われた。身長は靴を脱いで、ソックスをはいた場合はそのまま測定された。体重は靴と上着を脱いだ状態で測定された。血圧は、診療所の看護婦が、水銀血圧計を用いて受診者の右腕で、少なくとも座位5分間の安静ののちに測定した。収縮期血圧(SBP)としてコロトコフ第1音、拡張期血圧(DBP)としてコロトコフ音の第5音を用いた。健康診断の受診率は、参加者の数と住民のうち対象者の数の比率と定義し、結果は10年間を通じて平均で70%近くを示した。また年齢による受診率の差は20%以内であった。

B.胸部レントゲン写真

胸部レントゲン直接撮影は、10年間同一機器を用い吸気時にPA方向で撮影を行った。心横径の測定はDanzerによって記された一般的な方法を用いた(図1)。胸郭径は、右横隔膜最上部のレベルで左右助骨間の水平距離を測定した。測定はこの研究を指導する医師に教育された、別の診療所に勤務する一人の看護婦が行った。彼女はmmの単位で、各距離を各々2回測定するよう指導された。何らかの原因により、心横径又は胸郭径を測定不能のレントゲン写真は研究から除外された。除外された原因は、不鮮明な写真、心横径とくに左(MR)の最大部分が計測不能そしてあきらかな斜位撮影などであった。

 

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C.統計学的分析

統計学的分析はSPSS for Windows Release6.1.3(SPSS Inc.,Japan)を用いて行った。女性と男性は別々に分析された。性差を分析するために無対応t検定法を用いた。血圧、CTRとRV5の相関についてはPearsonの相関係数を用いた。また肥満度の指標としてbody mass index(BMI)を用いた。

III.結果

表1は女性と男性の延べ対象集団の特性を示す。年齢、BMIとCTRの平均値は男性より女性が有意に高かった。男性および女性の両群においてBMIおよび血圧は全体の98%以上、RV5は75%、CTRは85%で測定されていた。
表2は年齢とBMIについて、血圧、CTRおよびRV5との単純相関をみたものである。相関係数の95%信頼区間は、男性の年齢とRV5、およびB

 

 

 

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