救急ヘリコプター搬送を考える送り出す側の立場から−利尻島国保中央病院の場合−
北海道・旭川医科大第3内科 西野徳之・大西浩平
北海道・市立札幌病院外科 青木貴徳
要旨
利尻島は離島がゆえ、救急患者の搬送には航空機による搬送を余儀なくされることがある。しかし、ヘリコプター基地から長距離であることや搬送依頼手続きが煩雑なために要請から到着までに4時間以上かかるのが普通である。利尻到着後さらに2時間ほどの復路の搬送があり、患者搬送全体の時間経過は6時間以上に及ぶことが多い。このような搬送状況は救急患者の状態の悪化を及ぼす可能性があり、早急に改善されねばならないと考える。そこで今回我々は過去10年間に救急搬送がどのように行われたのかを検証するとともに、ヘリコプターの運用の問題点について考察する。
また実際の搬送がどのように行われているのかを、これにかかわる人々の動きからシュミレーションして紹介する。
はじめに
利尻島国保中央病院は、利尻島民(約9千人)の約9割、また救急患者のほぼすべてを診療している。島外への救急搬送は、年間患者数のわずか0.08%にすぎないが、直接人命にかかわることがあるだけに非常に重要な要素と言える。
島外搬送は日中であれば、多くは定期船により市立稚内病院へ搬送するが、離島という環境から、航空機による搬送を余儀なくされることも少なくない。そのため北海道では、北海道警察航空隊(以下、道警とする)、自衛隊、海上保安庁が救急搬送体制を支えている。
離島における救急搬送
離島における救急搬送について、利尻島で1985年4月から’96年1月までに(年度別集計。ただし’95年は’96年1月まで)発生した393例を例にとって検討してみたい。
まず性別の内訳は、男性217例、女性176例であった。疾患内訳は、整形外科110例(28%)、脳外科87例(22%)、消化器54例(14%)、産婦人科30例、腎・泌尿器科26例、心・血管系21例、その他65例であった。
搬送手段(図1)は、定期船が317例(81%)、へリコプターが50例、飛行機が17例、巡視船が9例となっている。
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