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離島中核病院におけるEMSを用いたPALLIATIVE THERAPY

北海道・市立札幌病院外科 青木貴徳
北海道・旭川医科大第3内科 大西浩平・西野徳之
北海道・旭川厚生病院放射線 齋藤博哉

要旨

expandable metalhc stent(以下EMS)を用いたpalhative therapyは近年その報告例が増す傾向にあるが、それらの殆どが高次医療機関よりのものである。当院では、十分なインフォームドコンセントを得た上で2例にEMSを用い治療を行った。1例は原発性肝癌の下大静脈狭窄例にEMSを挿入し、下腿の浮腫と腹水の改菩を認めた。もう1例は食道癌の狭窄例にGore-TexでカバーしたEMSを用い狭窄を解除、食物摂取可能となった。いずれも、都市部の病院で治療をうけ、これ以上の根治術の適応は無いと考えられ紹介となっていた。重篤な合併症もなく良好な結果が得られた。今後地域医療の現場でも、新しいデバイスを用いた積極的なpalliative therapyが行われることが期待される。
末期癌などにおけるpalliative therapyの医療機関格差は縮小されることが期待されている。

Expandable metallic stent(以下EMS)を用いたpalliative therapyは胆道、気管および消化管などの狭窄性病変の治療に臨床応用され、近年のquality of life(以下QOL)を重視した診療傾向にも伴い有用例の報告が増している。しかしその報告のほとんどは、比較的高度の機能を有する都市部の施設からのものに限られている。

われわれの勤務する利尻島国保中央病院は、北海道の最北に位置する利尻島の中核病院である。1985年10月の開院以来10年間、自治医科大学卒業医師が勤務し、現在医師3名で診療を行っている。住民の大病院指向には根強いものがあるが、最期は地元でと考える患者も少なくなく、このため種々の対症療法が当院でも必要とされる。

われわれは旭川厚生病院におけるローテート研修においてEMS留置による治療を放射線科にて研修した。今回、EMSを用いたpalliative therapyを2例に行い良好な結果を得たので報告する。
なお、両症例とも施行に際しては十分な説明をし同意を得た。

考察

近年、QOLを重視した診療傾向の高まりとともに、従来であれば治療の対象とはなりがたかった病態に対しても、積極的に治療が試みられている。当院のような離島の中核病院では、他院でこれ以上の根治療法の適応がないとされ、ターミナルケアを目的に転院してくる患者も少なくなく、palliative therapy手技の向上は責務と考えている。

これに対しわれわれは、多科ローテート研修を通し疾痛管理法などの基本的なpalliative therapyを学んだ。同時に近年トピックスとなっているEMSを用いた治療の研修も行うことができた。これらは最先端の治療法ではあるが、地域医療の現場でも実施可能な治療法と考えられる。
下大静脈閉塞に対するEMSの応用については、

 

 

 

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