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(4)高血圧について

高血圧の受療率は、4.8〜18.6%と全国的なレベルに比較して高い。島別では平均年齢と受診率が高い島が、そのまま高受療率であり、地理的要件との間には相関はなかった。各島に食生活上の微妙な相違があることを村民からしばしば指摘されるが、今回の調査に関する限り、島ごとの際だった特徴はみられなかった。高血圧は食生活の違いが明瞭に反映される疾患であり、今後は一定の診断基準で同時期に一斉検診を行ってみる必要がある。


ヘリコプターによる救急搬送

(1)概要

離島の多い鹿児島県では全体で年間約130回のヘリコプターによる救急搬送が行われ、十島村はその中で十数回を占めている。飛行時間は最も遠い宝島までは片道1時間50分ともなるが、原則的に本土まで往復する。しかしまた、天候によりトカラ列島よりさらに南方の奄美大島に搬送することもある(図1)。この業務における問題点については、既に報告をしてきた。

 

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平成4年4月から同7年3月までの3年間に、港湾工事や道路建設のため島に出張中の土木関係者や旅行者などを除き、十島村、三島村住民の搬送は48回行われた。その疾患別内訳を表3に示した。外傷は17名(男性14名、女性3名)で、4歳〜76歳にわたっている。殆どが手術を要するため、外科的設備が完備され高度な緊急手術が可能な医療機関に直接搬送することが多い。また、脳血管障害に次いで急性腹症、難治性喘息、発作、切迫性流産が多かった。

さて、ヘリコプターによる搬送には離島緊急医療対策組合の総括のもと、地元役場、県庁、自衛隊、海上保安庁などの多くの職員が役割を分担している。システムが煩雑で、要請から出動まで時間がかかることがあるが、派遣決定からの発進は極めて迅速である。また、厳しい気象条件下でも即座に出動してもらえることもしばしばある。現地のヘリポートの完全な整傭や要請システムの簡素化など取り組むべき課題は残されているが、自衛隊や役場職員の積極的な対応がいつも感じられ、直接医療に携わる者として感謝している。

外傷が老若男女を問わず最も多く、リスクの大きい土木作業や農作業の最中が目立っている。また、現地赴任中の教職員の搬送もあり、多少とも島の生活に不慣れな者にとっては十分な注意が必要であろう。開放性の損傷の評価には、電話回線を介する静止画像の電送システムを利用している。一方、X線装置がないため骨折などの正確な把握は不可能で、深部の損傷の評価は本人の自覚症状や理学的所見に頼らざるを得ない。

ところで、ヘリコプター搬送における医師として


 

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