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紹介患者の状況からみた当診療所と地域住民及び連携病院との関係

岩手県・普代村国民健康保険診療所 遠野千尋

要旨

普代村国民保険診療所は岩手県の沿岸北部に位置する普代村にあり村内唯一の医療機関である。現在自治医大生が常勤医師として1名で診療を行っている。診療では当院では対応できない疾患も多く、中核病院である県立久慈病院との連携で日常の診療が成り立っている。今回は当院からの紹介患者の状況を検討することにより、地域住民と当院との関わりや医療機関どうしの連携について考察した。その結果、現在のところ当診療所は地域住民の期待に十分応えているとは言い難いと考えられた。また、中核病院への依存ばかりでなく今後広まると考えられる在宅医療を実践するため近隣の診療所との連携も必要であると考えられた。

I.はじめに

今日の我が国の医療供給体制は全国平均的には、量的レベルは十分なものとなってきており、医師養成数の削減が取り沙汰されている。しかし地域的に、医療従事者や医療機関の偏在が現実には大きな問題になっている。ことに、僻地における医師、歯科医師の確保は各市町村、地域は苦労しているところである。
普代村は岩手県の中心である東北本線沿線からは最も遠い地域の一つで、医師からは敬遠される地域であるため普代村国民健康保健診療所の医師の確保には苦慮しており現在のところ県からの自治医大生の派遣により常勤医師を確保している。しかし岩手県では同一の診療所への自治医大生の派遣は期限があるため村としても定着する医師を確保しなければならない。一般に医師、歯科医師の定着には、医師らが望むさまざまな生活環境の充実は墓より診療条件の充実が重要な点を占める。その条件として診療設備の充実のほか、連携医療機関として後方病院の確保が大きな位置を占めると考えられる。そのことにより、さまざまな疾患に遭遇する日常の診療が安心して行えるものとなる。それは医師自身のためならず、医師の少ない僻地の住民がより良い医療受けるための重要な要件である。当院の医療スタッフは医師が1名、看護婦が3名で原則として入院はなく患者の対応に限界があるため近隣の医院、病院へ紹介することなくしては、この診療所の医療は成り立たない。
そこで今回は当院の紹介患者の内容を検討し、地域住民と当院との関わりや地域中核病院などとの連携について考察したい。

II.方法

当院における、平成1年1月より、平成7年12月までの7年間の、他の病院または医院への紹介患者数(以下紹介数と略す)645人と、投薬のみでなく実際に診療をした診療患者総数(以下診療数と略す)60930人を比較、検討し、年度別の推移、月別の変化、紹介先病院の状況、紹介する疾患や診療科の状況などについて分析する。

 

 

 

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